November 7, 2008

「サロメ」@METライブビューイング

カラヴァッジオのサロメ●先日、「カリタ・マッティラのサロメ」でも触れたMETライブビューイングの今シーズン第1作R・シュトラウス「サロメ」、東京でもようやく上映されて新宿ピカデリーへ。「何でも見せちゃう」「何でもリアル」を追求するのがMETライブビューイング。今回は休憩がないので舞台裏紹介はないんだけど、それでも開幕直前の楽屋にカリタ・マッティラを司会役のデボラ・ヴォイトが訪ねたりする。カリタ・マッティラは先シーズンの「マノン・レスコー」での幕間インタビューで、「わたし今猛烈にストレッチしてるのよ、ほらほら、これ180度開脚よ、ホーホホホホ!」(←意訳)みたいなことをハイになって語ってたんだけど、今日わかった、あの180度開脚はサロメ役で使うためだったんだっ!
●いや、そんなことはいいか。カリタ・マッティラ、絶唱。すさまじいサロメだった。演出はユルゲン・フリムで、一応登場人物が20世紀の服装をしてたりするけど、荒業も飛び道具もないストレートなもの。例の「7つのヴェールの踊り」は男性ダンサー2人が絡みながら、(知らないから想像だけど)正調アメリカン・ストリップティーズを見せてくれて、踊っているのがオペラ歌手だといういちばん肝心な点を除くと(笑)圧倒的な本物感。いやー、この踊りをどれだけ練習したんだろ。もう降参。ストレッチだけじゃなくて、きっとダイエットも激しくしたと思うんだ、一見わからないけど。48歳を16歳(17歳だっけ?)にするために、ここまでやるのか、みたいな。「何でも見せちゃう」「何でもリアル」だから、観客の想像力なんて当てにしないで、作れるものは徹底して作りこむ。最後の全裸になったらしい瞬間は、カメラがヨソを向くのでお茶の間も安心。ていうか、そのまま映すと映画館でR指定になるのかなあ? あれ、でも生首はいいんだっけ。口の周りを血だらけにして熟女が生首に接吻するシーンのほうがよっぽど問題な気もするけど、よくわからん。
●スゴいよ、メトは。ヘロデ役のキム・ベグリーの顔芸とか。笑ってしまうほど見事。高解像度映像が前提の顔芸。あと黙役の首切り奴隷の人も可笑しかった。どう見ても「マサイ族の勇者」みたいな体脂肪率5%くらいのおっかない人が、黒褐色の肌をテラテラさせながら蛮刀みたいなのを振り上げて、ヨカナーンの首を斬りに地下牢に入っていく。本物っぽくて怖すぎだよ! 「何でも見せちゃう」「何でもリアル」だから。やめて、夢に出てきてうなされそう。
●カメラワークも緻密。ここまでやろうと思ったら、カメラとか映像の編集とか、どれだけがんばらなきゃいけないんだろ。仕切ってる人は偉すぎ。
●次回予告編で流れていた、ジョン・アダムズ「ドクター・アトミック」がまた強烈なんだ。画面に「廣島市」が出てくるし。ナガサキ~って歌ってるし。被爆国視点で見るとどうなのかな。
●誰も劇場でポップコーン食べないよね……やっぱり。うるさいから。食いしん坊の人のために、静かに食べれる(ら抜き)堕落したジャンクな食い物はないかなあ。バリボリ齧っても隣の人が気づかない無音チップス絶賛待望中! コーラとセットで。

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