December 31, 2008

2008年を振り返らない

●今年もいよいよあとわずか。この一年を振り返って見ようかと思ったけど、一年は長い、そしてベストCDとかベストコンサートを挙げようかなと一瞬考えて、手帳をペラペラとめくり返して見るとやはりこの一年は長かった、そして何かを選ぶってのは難しいなあと嘆息しつつ、2008年をたった今ここで回顧しない。と、去年も書いた気もするけどまあいいか。
●でも2008年、ワタシの音楽生活でいちばん何が変わったかといえば、たぶん家で音楽を聴くにあたって、PCを通じて聴く時間のほうがCDプレーヤーで聴く時間より長くなった「元年」みたいなことかも。いや、CDは相変わらず中心に位置するものではあるんだけど、ネットラジオをつけっぱなしにする時間が増えたというか。自分で選ぶより、勝手に飛び込んでくるものを浴びたい気分ともいえるし、CD棚をもう増やしたくない、むしろ電子化して減らしたいっていうか。あと、CDとiTunes Plusなら後者を選ぶ、でもiTunes PlusじゃないんならCDのほうを選ぶ、でもブックレットが欲しいと無条件にCD、とはいえDGみたいにmp3ダウンロードできてブックレットがPDFならmp3を選ぶとか、中身を入れる容器をどうするかにいちいち個別に迷ったりしたのが2008年。「アルバム」って概念はどこまで「アルバム」なんすかね。
●それから音源のDRM(著作権管理機能)関係。クラシック音楽界に関しては、メジャーレーベルが率先してDRMを過去の遺物にしつつあるというのが現状認識で、リスナーフレンドリーで吉な状況なんだけど、唯一惜しかったのはAmazon mp3のサービスが2008年中に日本で始まらなかったこと。一年前は始まるって言ってたのに。
●コンサートは自分としてはよく通ったほう。今年は革靴でたくさん歩いた。
●きわめてすばらしいコンサートに出会うと、「ああ、今ここで体験しているこの時間が終わらないでくれ。先に進まないでくれ」っていう気持ちになるじゃないっすか。まれに。それと同様に、CDを聴いていて「ああ、これはすばらしすぎる、だから先に進まないでくれ」という感情がわいて、その結果として「ストップボタンを押したくなる」ことって、ないですか、ワタシはある、きわめてまれに。すばらしすぎるから、聴くのを止めたくなる。実際には止めないんだけど、なんていうかなー、理屈を付けるとすると「ふと聴きはじめてしまったが、この喜びを今味わってしまうのはもったいない、もっと準備があって驚きながら聴くべきだ、今の自分はそんな状態じゃない」的なロジック。
アンデルジェフスキのベートーヴェン●2008年でそんな気分になったのを一つ思い出して見ると、このかわいそうなくらい名前の日本語表記が定まらないアンデルジェフスキのベートーヴェン。これ、バガテルop126のほうが先にあって、続いてピアノ協奏曲第1番が入っている。コンチェルトの余白にバガテルじゃない、逆だ、バガテルの余白にコンチェルトなのだ! ってのは言い過ぎとしても、こんなにみずみずしいバガテルはグールド以来。偏愛しがちな曲でもあり、枯れてて、でも潤ってる。なんていうかな、若くて優秀なピアニストって毎年たくさん出てくるじゃないっすか。優秀じゃない人を探すほうが難しいくらい。みんな超優秀。尊敬すべき。でもみんながグールドとかホロヴィッツではない。グルダでもないし、ミケランジェリでもない。優秀っていう以上のもの、どんなに小器用な常人ががんばってもマネできない領域があって、そこではこんなシンプルなバガテル弾いても「ストップボタンを押したくなる」気分にさせることが可能。才能に疑いがないってすばらしい。
●あけましておめでとうございます。まだあけてないけど、前もって。よいお年を。

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