March 15, 2009

プーランク「カルメル会修道女の対話」

●しまった、これ殉教モノだった。と気づいた、先週末のプーランク「カルメル会修道女の対話」、新国立劇場のオペラ研修所公演で。日頃、オペラのヒーローとヒロインって、若者のロマンスのはずなのに、おおむね中年以上の男女が取っ組み合いをするみたいな感じになるのがフツーであって、内心あれはヤだなと思うワタシがさらに正直なことを言えば、いまやネトレプコですら若い女性の役は厳しいとか思うんである、いやそれは舞台じゃなくてメトライブビューイングとかDVDみたいにアップになるからなんだけど。その点、ともかくこのオペラ研修所公演ではリアル若者たちが歌うのでハッピー、そう思っていた、事実手渡されるパンフレットで歌手たちの写真を見よ、この人たち、本当にオペラ歌うんすか、ありえないほど美男美女ばかり、まぶしいぜ。だがなんという己の寝ぼすけぶりか、修道女が殉教するオペラにロマンスなど存在しない! するわけないっ! 幕が開けてから気が付いたワタシ、自分への怒りのあまりに、中劇場のイスをベリリと引き剥がし両手で持ち上げてピットめがけて投げ込んだ、ジャイアントスウィングしながら。そんな光景を幻視する不敬者、スマソ、舞台上の祭壇に向かって懺悔するしか。
●でもそんなに若くて美しいのに、どうして修道女に! と物語内部と外部からダブルで問いかけたい。
●が、良い公演であった、そしてこの舞台は見ておいてよかった。自分は修道女たちの論理に決して共感しないということがよくわかった。老齢のマダム・ド・クロワッシーが現実の死を目前にして苦悶する場面が優れている。
●最後の一人一人と歌いながら断頭台へ向かう感動的なシーンを、断頭台なしでその場で倒れるという形で演出するんだけど、何もないところでバタリと倒れるのって難しいっすよね。たぶんどんな演技より難しくて、倒れるほうも見るほうも時代劇の「斬られ役」が身についてて、監修福本清三みたいになりがち。思わず自動的に頭の中でセリフをそっとアテレコしちゃうんすよ。「ぐふっ、と、殿、お許しを……」「む、無念でござる……」「ぐはっ! わが人生にー、いっぺんの悔いなーしー!」「ジオン公国に、栄光あれ!」「ひでぶ!」とか。じゃあどう倒れればいいのかは謎。

トラックバック(1)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/1124

【2009年3月14日(土)14:00~ 新国立劇場中劇場】 <新国立劇場オペラ研修所公演> ●プーランク:《カルメル会修道女の対話》 →岡昭宏(B... 続きを読む

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「「ヤバい社会学」(スディール・ヴェンカテッシュ著)」です。

次の記事は「煎り上手」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ