June 2, 2009

「時をかける少女」(アニメ版/細田守監督)

「時をかける少女」●アニメ版の「時をかける少女」。これ、映画館で公開されたときにすごく評判になってたのを見逃してたんだけど、ようやく見て驚いた。こんなにも傑作だったのか。たしかにこれは「時かけ」ではあるが、子どもの頃に読んだ筒井康隆の原作(ジュブナイル)とも、原田知世主演の映画(大林宣彦監督)とも違ったタイプの青春物語になっている。原作に古典的な要素があったということだと思うんだけど、演出の力によってまた新たな命が吹き込まれたというか。リメイクというより、オペラの新演出みたいなもので、時代や設定を上手く読み替えて、現代に通用する物語として「時かけ」が生まれ変わっている。
●なにしろ原作は1967年っすよ。もう40年以上前。中三の主人公たちの名前が「和子」と「一夫」と「吾朗」だ。和子と一夫なんて今ならオバサンとオッサンの名前で、とても中高生には思えない。で、細田アニメ版ではヒロインが「マコト」(名前の通り男のコっぽい元気なコ)、男子二人組は「チアキ」と「コウスケ」。年齢は17歳の高校生と設定。あと現代版演出に欠かせないように、ちゃんとみんなケータイを持ってる。「コクる」っていう文化もできてる。
●マコトとチアキ、コウスケはいつも3人で一緒にいる。放課後にはゆるーく野球したりする。毎日が楽しい。こんな日々が永遠に続くんじゃないかって気がする年頃だ。でもこれは17歳の一瞬にしか成立しない居心地の良さで、誰もが大人にならなければならないし、この男女3人の関係はそのままというわけにはいかない。マコトがいくらタイムリープで都合よく過去を書き換えたりしたところでその事実に変わりはない。タイムリープなんてできてもできなくても、結局は一度しかないその時はその時にしか味わい尽くすことができないものだということ、そして人生はリセットはできてもセーブはできないという真実が甘酸っぱく描かれる。あちこちに笑える場面が盛り込まれてて、ジャイアント・スウィングやってる男子の絵とか、それだけでもバカすぎて猛烈に可笑しい。しかも絵柄も美しくて完璧。

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