February 22, 2010

氷上の渡り鳥

スピードスケート。彼らは飛んでいる●本当はオリンピックとか、大好きなんである。24時間、いつテレビをつけてもNHKではオリンピックが放映されているのが理想だ、しかも年中無休とかで。「テレビ番組を見る」というのが少しだけ億劫なんだけど、スポーツ中継への興味に抗えず、録画して2つの競技を見た。
●まずジャンプ・ラージヒル。葛西紀明の2本目のジャンプがカッコいいとかそういうのを別とすると、なにが驚くかって着地だ。あれ、ジャンプっていう名前の競技だけど、実質的には「落下」だと思うんすよ。だって踏み切った位置より高い場所にはほぼ飛んでないわけで、そこから滑空して落下していく競技なんだし。でも、あんな高い場所から猛スピードで落下しても、選手は平気で着地できるってスゴいっすよね。超人。あの着地する瞬間、膝と足首にはどんな力がかかって、それをどう動いて相殺するのか。
●あと、スピード・スケート1500m。彼らは氷上を飛んでいる。500mとか1000mと違って、1500mだと、オリンピックレベルの選手でさえスタミナを消耗して最後に大失速する選手がいる。単にスピードが落ちるとかいうんじゃなくて、あれは渡り鳥の群れの中で体力を消耗した個体が脱落していく無慈悲な光景を連想させる。併走する選手からだいたい2秒以上遅れるとそんな感じになる。もう飛べません。パトラッシュ!みたいな。
●一方、トップレベルの速さで飛ぶ選手にはなにが起きるかというと、「影武者」が併走するのだ。え、意味わかんない? つまり、その時点で1位を狙えるペースで走っている選手に対しては、テレビが現時点トップの選手の走りを影のようなバーで再現してくれるんである。これがあると、今の選手は1位の選手と比べて、ゴール前で失速したなとか、逆にゴール前で追い抜いたとかわかるわけだ。親切だし、スリリング。でもあの「影武者」バーって、なんか少し怖くないっすか。なんていうかな、地面に映った自分の影がよそ見した瞬間に勝手に動いているみたいな感じというか、鏡に映った自分の像が、視線を逸らした瞬間に「ニヤリ」と笑うみたいな感じの恐怖というか。そろそろ「影武者」バーは己の魂と意思を獲得しつつあるような気がする。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/1372

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「冬季五輪開催中」です。

次の記事は「鑑賞可能なレガシーメディア」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ

国内盤は日本語で、輸入盤は欧文で検索。