March 3, 2010

METライブビューイング「シモン・ボッカネグラ」

メトMETライブビューイングでヴェルディ「シモン・ボッカネグラ」。ドミンゴがタイトルロール、バリトン役を歌った公演。朗々と歌うシモン。このオペラ、序幕で若き日のシモン・ボッカネグラが出てきて、続く第1幕で25年後にジャンプするんすよね。ドミンゴだと本当に25年老けたって感じになる。宿敵役フィエスコのジェイムズ・モリスとともに、熟してて渋い。ドミンゴはなんか幸せそうに老いててステキだなあ、METライブビューイング得意の舞台裏ショットで出てくるとそう思う。
●それにしてもヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」って作品は! これ、スゴくない? この台本が生まれるにあたって紆余曲折はあったみたいだけど、ヴェルディはこれを台本作家から受け取ったときに頭を抱えなかったんだろうか。二人の男が宿敵で、ヒロインがいて、そのヒロインは実は片方の男の娘であり、もう片方の男の孫娘であるという基本設定もどうかと思うが、ヒロインのアメーリア(エイドリアン・ピエチョンカ)もかなり不思議ちゃんだと思う。1幕のグリマルディ伯爵邸でシモンと会って、なんか唐突に自分の身の上話をはじめて出生の秘密を明かしちゃう。パオロと結婚したくないからということなのかもしれんが、対立する側の権力者にそんなことまであっさり話すなんて。
●でももっと驚くのは1幕第2場の議会の場。アメーリアが誘拐されたぞ!大変だ、犯人は誰だ、お前だ、許さん!とやってるところに、いきなり当のアメーリア本人が現れて「みんな、止めて~」みたいなありえない展開。おいっ、あんたさっき誘拐されたんじゃなかったの! 小娘一人に逃げられるってどんな緩い誘拐犯なの……。このアメーリアが出てくる場面はなんど思い出しても笑う。
●と、ワタシにはこの台本は筋が通っているようには思えないんだけど、でもヴェルディはものすごい情熱を注ぎ込んで音楽を書いた。奇跡のような瞬間がいくつもある。特に議会の場の重厚さ、高揚感は圧巻。話の筋がどうなっていようとも、音楽と舞台がすばらしければオペラはいくらでも人を感動させることができるのか。ヴェルディって天才、というかほとんど神! メトの舞台もゴージャスで見ごたえがあった。オススメ。
●ところで、序幕でマリアが死んだのはあれは自然死でいいんすよね、病気かなんかで。シモンが死体を発見したのは偶然? 第一発見者なの? フィエスコは娘の死ついてはどうなのよ(←まだ話に納得してない)。

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