December 14, 2010

最強に強まるエマール祭り

●オペラシティは熱かった。ピエール=ローラン・エマールのピアノ・リサイタル。圧倒されっぱなしでぼうっとした頭で帰路についた。バルトーク「4つの哀歌」op.9aから第4番、リスト「巡礼の年」第3年から「エステ荘の糸杉に寄せて」、メシアン「鳥のカタログ」から「カオグロヒタキ」、リスト「巡礼の年」第1年「スイス」から「オーベルマンの谷」。ここまでの前半だけでも相当なボリューム感があった。怪物的な威容を誇る「オーベルマンの谷」が醸す凛然たるロマンティシズム。休憩後はリスト「巡礼の年」第3年から「エステ荘の噴水」、ラヴェル「鏡」。光と影の間にある無数の段階の輝度を駆使した「エステ荘の噴水」、「道化師の歌」に聴く重厚な躍動感、陶然たる「鏡の谷」の幻想性。ポマードをベッタリとぬりたくったエマールの髪が乱れるところに女子は萌えないのか?
●予定された演目だけでも十分心に残る演奏会だったが、ある意味でその後が本当のエマール祭り。会場の熱狂にこたえて現代音楽だらけのアンコールが延々と続く。太くてよく響く声で「クルターク!」と一声発して「ピアノのための遊び」第7巻から「フェレンツ・ベレーニ70歳へのオマージュ」。続いてハリソン・バートウィッスルの「ハリソンズ・クロックス」、ピエール・ブーレーズの「ノタシオン」9~12、ジョージ・ベンジャミン「ピアノ・フィギュア」6,8,9,10、メシアンの前奏曲集から「軽やかな数」、エリオット・カーター「マトリビュート」……。そして最後に「古典」とでも呼ぶべきシェーンベルクの「6つの小品」op19をまるまる弾いて、長いリサイタルを閉じた。このアンコールのほうこそ本編なのか。客席もこちらを目当てにしていたかのように沸く。もっと、もっと現代音楽を聴かせてくれ、でなければオレたちは飢えてしまうのだ、とでも言うかのように。会場内の熱気の総量を人数で割った「祭り指数」なるものを設定して比較するとしたら、ワタシが出会った今年最強の演奏会だった。
エマールのラヴェル:ピアノ協奏曲●この後、エマールはN響とラヴェルのピアノ協奏曲を共演する。
●花王がエマールのCMにエマールを起用しますように。セーターを着たエマールが「フツウの洗剤では洗えない素材・アイテムも傷めず洗えますよ~」みたいなことをフランス語でしゃべってニッコリ。奥様方はエマールの髪型にくらくら。

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