February 16, 2011

映画「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」

ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路今年は音楽映画が相次ぐのだが、春公開の「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」試写を拝見。ルネ・フェレ監督・脚本、フランス映画、120分。モーツァルトのお姉さんナンネルを主役としているのがおもしろい。弟ヴォルフガングは神童なんだけど思い切り脇役で、ホントにただの弟(笑)。ナンネルは不遇な人生を送ったと考えられていると思うが、彼女が若くて輝いていた少女時代を描く。
●ナンネルはやはりヴォルフガングの陰に隠れた存在。でも超大胆なフィクションに基づくロマンス要素が盛り込んであって、若い女性が主人公だと物語が広がるんすよね。この創作は成功してるんじゃないかな。映画はこれくらいのフィクションを盛り込まないと。音楽映画は史実にとらわれすぎの傾向があると思ってたので、その意味で吉。
●あと、いいなと思ったのは冒頭シーンから描かれている「旅の不快さ」。モーツァルト一家が旅から旅の暮らしをしていた話は有名だけど、これって音楽一家の「営業」なわけで、当時の平民の長旅なんて不快なものに決まってると思うんすよね。早い話、レオポルトは息子の神童芸を見た貴族からカネをもらえなきゃ旅も続けられないはずで、なのに貴族は褒美に豪華な煙草入れみたいな装飾品をくれちゃったりして、チ、チ、チ、これじゃあ困るんだよ、旅ではモノよりカネだよ的な状況はままあったんじゃないかと思う。
●この映画は「ナンネルは才能があったのに、女に生まれたため作曲家となることを社会が許さなかった」という話でもある。あれれ……でもそれって「クララ・シューマン 愛の協奏曲」でも「敬愛なるベートーヴェン」でも描かれていた主題じゃないの。なぜ今そのテーマが続くのかは謎。
●「ショパン 愛と哀しみの旋律」や「マーラー 君に捧げるアダージョ」(これはまた後日に)に比べると、これが映画としてもっとも一般性があるのでは。前二者はデートには完全に不向きだが、「ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路」ならOK。ロマンス成分に加えてコスプレ成分もあり。クラヲタ成分は薄めなのでそのつもりでどぞ。

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