February 28, 2011

「Dr.パルナサスの鏡」(テリー・ギリアム監督)

Dr.パルナサスの鏡●映画館で見逃してしまい、ようやく見た「Dr.パルナサスの鏡」(テリー・ギリアム監督)。ヒース・レジャーが急逝して、彼の演じた登場人物を(物語上に顔が変わってゆくという設定を加えて)ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが演じたという話題があったわけだが、その点はぜんぜん無問題。で、なによりもこれはテリー・ギリアムの映画で、彼のイマジネーションがどぼどぼと注ぎ込まれた結果、なんだか懐かしい雰囲気の作品になった。ストーリーはぜんぜん違うけど、名作「未来世紀ブラジル」をもう一回作った、みたいな。さらに「モンティパイソン」を彷彿とさせるところもあり(警官の場面とか)。
●時代錯誤な旅芸人の一座、その主Dr.パルナサスがトランス状態に入ると、彼の鏡の中へと入った者は自分の願望を想像の世界で実現してくれる迷宮世界を体験する。Dr.パルナサスは大昔に悪魔と取引きをした結果、不死を手に入れる。しかしその代償として、16歳を迎える娘を悪魔に差し出さなければならない……。
●「未来世紀ブラジル」とどう違うかといえば、それはこれが「老人ファンタジー」であるところ。フツーのファンタジーなら、若者が冒険を通じて成長したり挫折したりするところを、これは老人が主人公だから彼の求めるのは娘が無事に育つこととたぶん安らかな死くらいのもので、「選択」「賭け」の連続である生にはすっかり倦んでいるように見える。で、その娘がインテリア雑誌を読んでこぎれいな家具を備えた暮らしに憧れているとか、あいかわらず可笑しい。主人公の関心事はもう娘くらいしかないわけだけど、彼女を救うための最後の賭けですら、見ようによっては気力を失いつつあるというか諦めが早いというべきか……。欲望と活力にあふれたインチキ慈善事業家トニーがひたすら眩しい。ラストはハッピーエンドの形をした罰ゲーム型バッドエンドと見るべきか。

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