March 20, 2011

下野竜也指揮読響~東京芸術劇場マチネーシリーズ

●演奏会も何もかも中止・キャンセル・延期の嵐が続き、一体このままでは音楽界(というかもっと大きな枠なんだけど)はどうなってしまうのかと心配していたが、19日と本日、読売日本交響楽団が予定通り演奏会を開催してくれた。気温が上がり天気が快晴だったことと、前夜から大きな余震がなかったこともあってか、池袋に着いてみると日常そのもののような光景が広がっているように思えた。一瞬なにもなかったんじゃないかと錯覚しそうになるほど、雰囲気は明るい。もちろんそれは錯覚で、よく考えたら週末の池袋で人出がこんなに少ないということが異常事態そのものなのだが。店に人が少ない。経済活動の縮退ぶりは明らか、東京は被災地じゃないのに。
●しかしホールに入って、舞台にオーケストラが登場し、実際に音楽がはじまってみると、音楽そのものの力と日常への回帰が一歩前進したという実感が一体になって、とても勇気付けられた気分になった。これがもし熱く盛り上がるような名曲プログラムだったら、客席に特別な気分が醸成されただろうが、この日は「トランスクリプション」をテーマにした凝ったプログラム。バッハ~エルガー編曲の幻想曲とフーガ ハ短調、ブラームス~ベリオ編曲のクラリネット・ソナタ第1番、バッハ~シェーンベルク編曲の「前奏曲とフーガ」他。こんなときにこんな貴重な演目が聴けてしまうとは。巨大編成のバッハ~シェーンベルクを今ここで聴けているという超現実感。一方、ウェーバー~ベルリオーズの「舞踏への勧誘」ではお約束のフライング拍手があって会場に笑いが漏れて和む(あそこで拍手がなかったらそれはそれで寂しいかも)。
●冒頭にバッハ「G線上のアリア」が演奏され、黙祷が捧げられた。また読響からの100万円の寄付に加えて、会場内でも指揮者・楽団員が募金箱を持って立ち、義援金が募られた。ささやかながら協力。この一公演だけで84万円ほどが集まったとか。

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