August 17, 2011

「マネーボール」がブラッド・ピット主演で映画化。11月公開

映画「マネーボール」●因習と精神論がまかり通っていた野球のような世界に、「統計」による計量的アプローチを持ち込んで鮮やかな成功を収める。これこそがスポーツの世界におけるもっとも甘美な夢だろう(とりわけ理数系育ちのヲタにとってこんな痛快な話はない)。かつて、そんな夢が現実としてメジャーリーグで起きた。この統計的手法はセイバーメトリクスと名づけられ、今やマイケル・ルイス著のノンフィクション「マネー・ボール」のおかげで広く知られている(以前にこのブログでも紹介した)。打者の価値は打率や本塁打数などではなく、出塁率と長打率によって測られるべきであること、「アウトになった内野ゴロ」と「内野手の間をグラウンダーで抜けたヒット」には偶然以上の違いは認められないこと。そういったことが統計により明らかにされた。
●セイバーメトリクスの創始者ビル・ジェームズ(もともと野球人でもなんでもなく、缶詰工場の警備員をしていた)がこの世界の神なら、元メジャーリーガーながらGMとしてセイバーメトリクスを実地で活用し、低予算のオークランド・アスレチックスを快進撃させたビリー・ビーンはヒーローだ。おそらく現在ではセイバーメトリクスは本物の数学者たちの手によって無慈悲なほどに効率化され、各チームに普及して常識と化し、ついには手法の採用自体による優位は失われ、運用面の巧拙だけが残っているのではないかと想像する。このアプローチは斬新なアイディアだが、一度共有されてしまうと、公開情報から得られる数字だけでは差が付きにくいだろうから。ビル・ジェームズやビリー・ビーンの物語は、すでに美しすぎるおとぎ話となりつつあるのかもしれない。
●であれば、これほど映画化にふさわしい題材もない。映画「マネーボール」の主演はブラッド・ピット。監督はベネット・ミラー。11月11日(金)より、丸の内ピカデリーほかで公開される。

トラックバック(0)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.classicajapan.com/mtmt/m--toraba.cgi/1768

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「エンリコ・オノフリ「愛をこめて」」です。

次の記事は「HMV ONLINEがリニューアル」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ