October 18, 2011

マティアス・ゲルネ バリトン・リサイタル

●16日夜、オペラシティでマティアス・ゲルネのバリトン・リサイタル。これは圧倒的な一夜だった。シューマンとマーラーの歌曲を演奏するというので、この二人の組合せはいいんじゃないかなと思って出かけてみると、サプライズが。なんと、リサイタル全体が三部構成になっていて(ただし休憩はなし)、「愛」「喪失」「兵士」といったような3つのテーマで歌曲を分けて、シューマンとマーラーをミックスして歌ったんである。
●つまり、最初の「愛」はマーラーの「私はやわらかな香りをかいだ」ではじまり、シューマンの「詩人の目覚め」「愛の使い」と続き、マーラー「美しいトランペットが鳴りわたるところ」へとつながる。最後の「兵士」の部はシューマン「兵士」、マーラー「死んだ鼓手」、シューマン「二人の擲弾兵」、マーラー「少年鼓手」と並ぶ。
●もちろん歌詞の内容まではつながらないから、これを連作歌曲と見立てるのは無理にしても、それでも「編集」的なセンスによる新たな大作歌曲の再創造だとは思う。しかもシューマンとマーラーという、時代は違うけれどどこかで共通項(過剰さとか逸脱とか?)のありそうな二人を交配したのが鋭い感じ。
●で、プログラミングで理屈をこねておいて、実際に歌が始まると完璧すぎる美声をホールに満たして、最初の第一声で聴衆を魅了してしまう。こんなに甘美なバリトンがあるのか。一方で「兵士」パートでは輝かしくパワフル。変幻自在。最後のマーラーの「少年鼓手」では前奏と後奏で譜めくりの方が立ち上がって、ピアノ内部の弦を押さえてミュートした。音色の変化でより劇的になることに加えて、これをやると最後は歌手、ピアノ伴奏、譜めくりの3人が固まった姿勢で静止して終わるという、視覚的にも劇的な幕切れが用意されるわけで効果抜群。客席が「!」って息をのんだ。
●このコンセプトのリサイタルは、この日の東京が最初なんだとか。この先2年ほど、ゲルネはこの形でリサイタルを行なうという。

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