March 12, 2012

すみだ平和祈念と「3月11日のマーラー」

●9日(金)は「すみだ平和祈念コンサート2012」でスピノジ指揮新日フィル。もともとは東京大空襲の記憶を伝える「平和祈念」だが、日付が近いので3月11日の犠牲者への追悼という意味合いも加わる。ショスタコーヴィチの室内交響曲、バーバーの弦楽のためのアダージョ、フォーレのレクイエムと、哀悼の音楽がそろう。冒頭にスピノジがメッセージを述べ、選曲意図(ショスタコーヴィチ作品はドレスデン爆撃がきっかけになって書かれた……等)などを話してくれた。亢進的で饒舌であることをスピノジに期待する向きには意表を衝かれるプログラムではあるけど、「平和記念」ということも忘れて普通の演奏会として音楽に没頭して満喫してしまった。特に前半。すみだトリフォニーで聴く新日フィルの弦楽器の響きはとても美しい。後半フォーレは栗友会合唱団、三宅理恵(S)、青山貴(Br)。
●10日の夜、NHK総合テレビで「3月11日のマーラー」。ハーディング指揮新日フィルのあの日のマーラー交響曲第5番を題材としたドキュメンタリー。Twitterなどの反響を見ても、総合テレビのインパクトの桁違いの巨大さを感じずにはいられない。とてもよくできている。地上波TVである以上、落とし込まなければいけないドキュメンタリーの定型があり、その引力に対して普通は断固抗いたくなってしまうのだが、それ以上に当日とその夜の自分のことを思い出し、さらに東京からしばらく演奏会が消えたこと、当面の予定が次々とキャンセルになり手帳が×印で埋め尽くされたこと、今後自分の仕事はどうなるのだろうと不安になったことなど、よみがえる記憶で目の前のドキュメンタリーが上書きされていくのを感じた。

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