May 6, 2012

ラ・フォル・ジュルネ2012復習 来年の展望と記者会見編

●LFJ2012閉幕。今年も朝早くから夜遅くまで会場につめて右往左往し、見たこと聴いたこと起きたことを消化する間もなく、突風とともに3日間が過ぎ去った(いや、実質もっと前から始まっているが)。記憶が薄れないうちに、書き留めておく。
LFJ2012記者懇親会
●今年は最終日の17:30という遅い時間帯に記者懇親会が開かれた。なので会見後ではOTTAVAの中継に間に合わなかったのが惜しい。会見では今年の開催結果速報(PDF)と来年の展望が話された。来年のテーマは「フランスとスペインの音楽~ビゼーからブーレーズまで」として構想中。「19世紀末から20世紀初頭にかけてのパリにはスペインからアルベニス、グラナドス、ファリャらがやってきて、ドビュッシーやラヴェルと交流していた」ということで、この時代のフランス人およびスペイン人作曲家を中心として、シャブリエ、ショーソン、プーランク、ミヨー、オーリック、ルーセル、カプレ、メシアン……等々を取り上げたいとルネ・マルタンさんが語ってくれた。ちなみにブーレーズ作品は「プリ・スロン・プリ」と「シュル・アンシーズ」の名が挙がっていた。また、今年大旋風を巻き起こした「渋さ知らズ」については、来年も招きたい、と。
●で、会見はよくある予定調和に終わらず、林田直樹さんのブログでも伝えられているように、率直な意見交換が交わされた。片桐卓也さんから、「ピーターと狼」映像について事前の告知がうまく機能していなかったため、何十年に一度の傑作でありながらホールAが2000人程度しか埋まらなかったのは大きな問題であること、またナントの企画全般について日本に持ってくる際の情報共有や告知手段について強い危機感を覚える旨の発言があった(「ブルドーザー的」という比喩にドキッとした)。このスージー・テンプルトンの「ピーターと狼」はワタシも観た。事前にナント取材陣から「秀逸である」と聞いてはいたものの、どれほどのものかイメージできておらず、「なにか事後のレポートでも書くときに見ておかないとまずいから一応チェックしておくか」みたいな半ば職業的義務感で足を運んだら、映像作品として視覚的にも演出的にもあまりにもクォリティが高くて夢中になってしまった。登壇者側から「プロモーションとして映像クリップを使おうと試みたが権利関係でNGになってしまった」という説明もあった。もしせめて30秒でも予告編があれば、どれだけ「伝わった」ことかと悔やまれる。ちなみにナント取材班によれば向こうでは学校の団体鑑賞が大勢入っていたとか。
●やるせないのは、ビジネスとしてきちんと映像の使用許諾を取ろうとするとやたら大変そうなのに、個人ユーザーが検索すれば簡単にYouTubeで観れちゃうってことだ。実際、ここにあるし、peter and the wolf 2006 (part 1) 。スゴいでしょ、これ。これを生オケ付けてやったんだから。個人的な感触としては、コンテンツ業界全般にある「権利」のとらえ方と、今のソーシャルなネットワークを経由する情報の共有され方との齟齬が、ここでもあらわになっているように感じた。もちろん、映像クリップがあったとしても、作品の真価を伝えようという熱意は別途必要なので、それだけの問題じゃないんだけど。
●もうひとつ会見では別の方から、今回のLFJは演目がお客の先を進みすぎているから、客席が埋まらなかったのではないか、もっと親しみやすい名曲を増やしてはどうかといった意見が出た。「(公演企画は)お客の半歩先を行くのがちょうどいいが、今回は2歩、3歩先を行ってしまった」という指摘だったと記憶する。しかし、これに対してマルタンさんは「ホールAのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番は空席だらけだった」と反論した。チャイコ1番で埋まらないのなら、選曲は関係ない。ワタシの実感としても、本当に先鋭なプログラムはチケットの販売率に影響しない小さな会場で行なわれており(100席とか200席の会場で開かれたウストヴォルスカヤやヴィシネグラツキーはそもそも完売していた上に、仮にこれらが一枚も売れなくても、ホールAの一公演5000席に比較すれば全体への影響はゼロといっていい)、チケット販売率はほとんどホールAだけで左右されるものと考えていいだろう。今回も小さな会場はすぐに売り切れていた。例年ホールAを埋めてきたお客さん(=今回来なかったお客さん)がどんな方々だったかを考察する必要がありそうだし、そこには一定の統計的数値の裏づけがほしいところ。最後は想像力が必要だとしても。
●質疑応答はこの2問だけで時間切れとなってしまったが、その後、東京国際フォーラムの方々やカジモトの梶本社長が片桐氏のテーブルに集まり、熱っぽい雰囲気でさらに意見交換が続いた。ワタシを含め同じテーブルにいた人間も自然に話に加わり、この際だからとあれこれ言いたいことを言う感じになった。ここの部分は公開の場での話ではないので内容には触れないが、意義はあったと思う。実のところ、音楽関係の記者会見では質疑応答になっても参加者にしらっとした無関心が漂っていることも多いわけで、LFJが本気で関心を持たれているからこその展開だったともいえる。もし会見で悪い数字が発表されてもそれに対して腫れ物に触るようにみんながスルーするようなら未来は暗い。

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