June 28, 2013

デュトワ&ロイヤル・フィル、ユジャ・ワン

●27日はデュトワ指揮ロイヤル・フィルへ。前半にメンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」序曲、ショパンのピアノ協奏曲第1番(ユジャ・ワン)、後半にドビュッシーの「海」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲。最初のメンデルスゾーンからして描写的で、これが景勝地に触発された音楽であることを思い出させる。後半のフランス音楽では精彩に富んだオーケストラの美しい響きを堪能。オケに対して何の先入観も持たずに聴いたんだけど、こんなにいいオケだとは。スーパー・プレーヤー集団という趣ではまったくないんだけど、全体から生み出される響きは艶やか。特に弦の澄明度が高い。
ユジャ・ワン/トランスフォーメーション●ユジャ・ワンは今回も鮮やかな赤のタイトなミニワンピ、ピンヒールで登場。足を交差させてコクンと折れ曲がる独特のお辞儀スタイル。「せっかくユジャ・ワン呼ぶのにショパンだなんて……」と思っていたんだけど、始まってみるとユジャ・ワンにしか弾けない、コントラストの強い、鋭敏でクールなショパン。これなら納得。
●会場にいたティーンエイジャーの女の子たちが「ユジャ、ヤバい」とか口にしていて(もちろん強い称賛の意味の「ヤバい」)、ドキッとする。そういえば、若い女の子たちが憧れるスター・ピアニストっていう存在がありうるのだった/ありうるべきなのだった。いつだって断崖絶壁を背に立ってるみたいな尖がったキャラは猛烈にカッコいい。自然な伸びやかさとは無縁で、どんなに鮮やかに弾き切ったとしても「本当はもっと弾けるのでは?」と思わせるような宿命的な英才を背負っているかのよう。つまり、真に「アイドル」ってことなんだけど。

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