September 19, 2013

「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」(ジョナサン・コット著/山田治生訳)

レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー●読了、「レナード・バーンスタイン ザ・ラスト・ロング・インタビュー」(ジョナサン・コット著/山田治生訳/アルファベータ)。これはバーンスタインでなければ成立しなかったであろう特別なインタビュー本だ。著者は初対面で午後の2時から午前2時までバーンスタインと過ごし、12時間をかけてインタビューしている。たった1回のインタビューから1冊の本を作ったのだから、恐ろしく効率がいいわけだが、しかし12時間のインタビューなどというものも普通はありえない。常人は1時間も話したらネタも燃料も尽きる。
●亡くなる一年前のバーンスタインが語ったことに、いくつもの興味深い話が散りばめられているのはもちろんだが、なによりインパクトが強いのはその百科全書的饒舌ぶり。あたかもトマス・ピンチョンの小説でも読んでいるのではないかと錯覚するほど、文脈から自由に言葉がほとばしり、次々と新奇な対話の情景を見せてくれる。バーンスタインの人物像を浮かび上がらせるために、これ以上適切な手段はないと思うほど。
●どんな12時間だったのだろう。たぶん実際には意外と寡黙な12時間だったんじゃないだろうか。インタビュアーは手練手管を心得ている。しかしバーンスタイン家のディナーに招かれて、チキンが出てきたからって「菜食主義者だから食べられません」と答える間の悪さと来たら! おまけに12時間も話し込んでおいて、最後に「あなたのいちばん好きなアルバムは?」みたいな質問を発する蛮勇にもくらくらする。卓越したインタビュアーになるためには嫌なヤツにならなきゃいけないのかも。読んでおもしろいインタビューって、だいたいインタビュアーにイライラするものだし。到底マネできない。

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