October 3, 2013

孤独な勇者

夜に●夜遅く、コンサートの帰り道。駅前で男のわめき声が聞こえた。非難する調子で、えんえんと通りすがりの人々に対してわめいている。にもかかわらず、周囲には恐怖ではなく、冷笑の雰囲気が漂っている。通り道だったので、やむなく男のほうに近づくと、むさくるしい格好をした老人が大声をあげていた。姿勢が不自然だったのでつい目が行ってしまったのだが、老人はズボンから局部を丸出しにしていた。だから、だれも彼を構おうとはしない。都会の不文律にしたがって、あたかもそこに男が存在しないかのように、みんな黙って通り過ぎる。わずかに忍び笑いを漏らしながら。
●ワタシも彼を空気のように無視して通り過ぎた。しばらく歩いていると、向こう側からサイレンを鳴らしながらパトカーがやってきた。だれかが通報したのだ。少なくとも猥褻物陳列罪、ほかにもなにか、公衆であたりかまわず恫喝する罪とかなにかがあるのかもしれない。警官が老人を取り囲むだろう。パトカーに乗せてどこかに連行されるかもしれない。事情聴取されるかもしれない。羞恥と引きかえに、やっと男の願いはかなえられるのだ。

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