October 10, 2013

オペラシティ B→C 155 太田真紀

●8日夜は東京オペラシティのB→Cで太田真紀(ソプラノ)リサイタル。シェーンベルクで始まり、バッハのカンタータBWV199、ダッラピッコラ、酒井健治「私は他人である Ⅲ」初演、細川俊夫「声とアルト・サクソフォンのための3つの愛のうた」を経て、シェルシの「山羊座の歌」(1962-72)から、というプログラム。ピアノ新垣隆、アルト・サクソフォン大石将紀(スゴすぎる)、エレクトロニクス有馬純寿。シェーンベルクの古典性とバッハの犀利さが際立つB→Cならではのプログラムというか。声の持つ表現の多様性、色彩感に圧倒されながらも、最後はシェルシの怪作。首にかけたゴングを鳴らしてあらわれる歌手の姿は祭司のようにも道化のようにも見える。特殊唱法を駆使しながら言葉にならない言葉が歌われ、交話的な音楽であるはずなのに、そこから意味や文脈を汲み取ることは絶望的に困難。真摯さと笑いは常にコインの表裏をなしていることを改めて実感する。意味は剥奪されるけれども、表現はきわめて雄弁という、先駆的ポストモダン。
●ところでシェルシといえば、この作品でもコラボレートしているソプラノ歌手平山美智子さんの名前がまっさきに挙がる。たぶん20年くらい前に、平山美智子さんに「音楽の友」誌のためにインタビューをしたことがあったを思い出した。どういうきっかけだったかぜんぜん思い出せないんだけど、ごく小さなインタビュー記事を作ることになって、当時編集部員だったワタシはたまたま氏のCDを持っていたので自分で話を聞くことにしたような……。まだインターネットもなにもない時代だったから、自分を筆頭にみんなが暗闇のなかで手探りしているようなものだったなと、軽く思い返す。

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