May 18, 2014

バルセロナvsアトレティコ・マドリッド@スペインリーグ最終節

アトレティコ・マドリッド●スペイン・リーグの今季最終節はともに優勝を争うバルセロナvsアトレティコ・マドリッド。この試合に勝ったほうが優勝(引分けならアトレティコ・マドリッド優勝)という劇的な展開になった。最後の一節で優勝争いの直接対決が実現するのは約60年ぶりなんだとか。バルセロナとレアル・マドリッドの二強以外は予算規模に差がありすぎて蚊帳の外というスペイン・リーグで、今季はアトレティコが大躍進を遂げた。この後、控えているチャンピオンズリーグの決勝はアトレティコ・マドリッドvsレアル・マドリッドのマドリッド・ダービー。こんなことは二度とないだろうっていうくらいのまさかの展開。
●もっともこうなったのもリーグ戦終盤で三強が失速しまくったから。バルセロナにチャンスはもうないと思っていたら、アトレティコもレアルもお付き合いで星を落として、最後の最後に「勝てば優勝」という幸運なシチュエーションが巡ってきた。マルティーノ監督のクビがとっくに決まってるかのような空中分解寸前のチームに、こんなチャンスが来ようとは。これに勝って優勝してもマルティーノはけちょんけちょんに批判されるんだろうか? 少なくともレアル・マドリッドを上回っているのに?
●一方のアトレティコ・マドリッドの監督はシメオネ(おっと、監督はともにアルゼンチン人だったわけだ)。選手時代はワールドカップでベッカムを罠に陥れて退場処分にした事件を始め、常に狡猾なプレイとハードタックルで対戦相手を苛立たせてきたあのシメオネ。いまや名監督だ。テレビの画面を通してもありありとカリスマぶりが伝わってくる。選手たちはすっかり心酔しているようで、冷めた空気が漂うマルティーノとは対照的。
●アトレティコは前半からいきなり負傷で主力二人ジエゴ・コスタとアルダ・トクランがピッチを退くという不運に見舞われる。序盤からラインがコンパクトではなく、十分にスペースがあったが、しかしバルセロナもかつてのような「ウイイレ名人」的なパス回しはできず。数値上のポゼッションではバルセロナが圧倒していたかもしれないんだけど、実際にはアトレティコの出足のよい守備に苦労して、出しどころを見つけられず苦し紛れのパスが多かった。アトレティコは終盤までずっと球際が厳しく、全選手がハードワークするというスタイル。バルセロナを応援して見ていたのだが、アトレティコの魂のフットボールには胸が熱くなる。
●試合が動いたのは前半33分で、バルセロナのアレクシス・サンチェスが、普通ならまず入らないという右サイドの浅い角度から、豪快なシュートを打って相手キーパー、クルトワのニアサイド上をぶち抜いた。これが決勝点だったら十分に伝説のゴールだったはず。しかし後半4分、アトレティコはコーナーキックから巧みにマークを外したゴディンが頭できれいに決めて1対1の同点に。試合はそのまま1対1から動かず、アトレティコ・マドリッドが悲願の優勝を果たす。終了直前はさすがに疲労が濃く、防戦一方になりつつあったが。
●バルセロナはメッシ、ペドロ(→ネイマール)、アレクシス・サンチェス、イニエスタ、セスク・ファブレガス(→シャビ)と名手をそろえていたのに、攻撃のアイディアが乏しく、せっかくサイド深くに侵入できても、クロスをあげるだけという非効率な攻めが目立った。局面ではうまいけど、意外性もないし、個人の爆発的なスーパープレイも見当たらない。なるほど、たしかにこれでは「ひとつのサイクルが終わった」と嘆かれるのも無理はないか……。あるいは彼らは単にマルティーノのもとでプレイする情熱を一時的に失っているだけなのかもしれない。ワールドカップでの彼らのプレイを見れば、その答えがわかるのかも。
●試合終了後、どれだけスタジアムが荒んだ雰囲気になるのかと思えば、意外にも客席も選手たちもみんなでアトレティコを讃えるムードになった。勝者への敬意のこもった拍手が続く。バルセロナが敗れたことよりも、アトレティコのようなチームが優勝を手にしたことのほうが、ずっと大きな意味のある出来事だとみんなが認めていた。

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