June 2, 2014

ファニー・クラマジラン・リサイタル、ラザレフ&日フィルのスクリャービン&ラヴェル

●30日はヴァイオリンのファニー・クラマジランのリサイタルへ(トッパンホール)。クラマジランを最初に聴いたのは、たぶん2009年のLFJ金沢。そのときプレス向けのプチ会見にもピアニストと一緒に顔を出してくれて、初々しい雰囲気で受け答えをしてくれたのが記憶に残っている。で、今回はピアノをヴァニヤ・コーエンが務めるはずだったのだが、なんと、当日朝に急病により出演できなくなるという事態に。急遽代役として呼ばれたのが広瀬悦子さん。過去にもたびたびクラマジランとは共演していたとか。よくそんな人がつかまったと思う。
●しかも、プログラムも前半は曲目変更なしでプーランクのヴァイオリン・ソナタ、武満徹「妖精の距離」、ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタが演奏された。後半のサン=サーンスのヴァイオリン・ソナタ第2番とブルーノ・マントヴァーニ「ハッピー・アワーズ」(これはソロの曲なんだけど)は、フォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番に変更。緊急事態にもかかわらず、元のプログラムが可能な限り保存されたことに驚く。ジェットコースターに途中から飛び乗ったようなものだろうに、広瀬さんは切迫した状況を完璧に乗り切った。スゴすぎる。クラマジランの外見に反してたくましく力強いヴァイオリンとともに満喫。フォーレは両者ともに予定外の演目になったわけだけど、スリリングで気迫がこもっていた。
●31日はラザレフ指揮日フィル(サントリーホール)。スクリャービン・シリーズの一環で、リストの交響詩「プロメテウス」、スクリャービンの交響曲第5番「プロメテウス」(若林顕ピアノ)、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第1&第2組曲(晋友会合唱団)。スクリャービンの「プロメテウス」は本来「色光ピアノ」という音と色彩効果が連動する楽器を使用することになっている。実際にはそんな楽器は調達できないので、かつてアシュケナージ&N響やLFJでのリス指揮ウラル・フィルが演奏した際には独自の照明演出を加えることでスクリャービンのアイディアを生かそうとしていたが、今回はそういった趣向は一切なし。純器楽作品としての「プロメテウス」。こうして裸になった状態で聴いてみると「法悦の詩」の続編という印象。いかがわしさは大幅に後退する。
●むしろ後半のラヴェルがおもしろかった。驀進するラヴェルというか、土の香りがするようなワイルドなラヴェル。合唱が入る部分で「プロメテウス」との同質性が漂ってくる。フォースの力で曲を書いたラヴェルと、フォースのダークサイドで作品を生み出したスクリャービンというか。曲の終わりはラザレフが指揮台でくるりと回転して客席を向いて決めポーズをとる、おなじみのドヤフィニッシュ。さらにアンコールとしてボロディン「だったん人の踊り」が演奏され、これも「ダフニスとクロエ」の「全員の踊り」に照応する。前半のスクリャービンの暗黒世界とうってかわって、後半は爽快な音の饗宴に。

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