June 11, 2014

コパチンスカヤ週間

●10日はトッパンホールでパトリツィア・コパチンスカヤのヴァイオリン。同ホールの前回公演では無伴奏プロだったが、今回はピアノにコンスタンチン・リフシッツ。前半にC.P.E.バッハの幻想曲嬰ヘ短調Wq80、シマノフスキの「神話―3つの詩」Op.30、シェーンベルクの幻想曲Op.47という「ファンタジー」プロ、後半にプロコフィエフのヴァイオリン・ソナタ第1番。スリリングかつ獰猛なリリシズムを満喫。憑依妖精コパチンスカヤ。闊達で開放的なリフシッツのピアノはかなりキャラクターが違うが、プロコフィエフではうまく相互作用して大きな音楽が生み出された。この曲、ほかのプロコフィエフの戦後作品と同様にいまひとつ苦手だったんだけど、はじめて心底すばらしいと思えたかも。前半シェーンベルクもあたかもコパチンスカヤのための作品のよう。アンコールはなし。
●8日はNHKホールでN響定期。指揮はアシュケナージ、ソリストにコパチンスカヤのロシア・プロ。グラズノフの交響詩「ステンカ・ラージン」で始まり、続いてプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。一瞬にして客席を引きつけるコパチンスカヤの強烈なパーソナリティが、3600席の巨大なNHKホールでも伝わることを確認。冒頭のソロからコパチンスカヤ劇場開始で、鋭利で濃密なプロコフィエフに。この日も裸足で演奏。アンコールにはホルヘ・サンチェス=チョンの「クリン」を弾いてくれた。発声しながら(ときには奇声をあげながら)ヴァイオリンを弾く短い作品なんだけど、演奏中もなんどもどっと笑いがこぼれて、客席からめったにないくらい生き生きとした反応が返ってきた。これは前回のトッパンホール公演でも弾いた曲だけど、トッパンのお客さんはこういう作品にも慣れているのか、演奏中はじっと静かに聴いて、終わったところではじめてドッと笑ったのを思い出す。後半はがらりと世界が変わって、チャイコフスキーの「くるみ割り人形」第2幕。組曲で聴く有名曲の大半が入っていて、おまけにそれ以外にも親しみやすい曲がいくつもあって、無尽蔵のメロディメーカーぶりを感じさせる。ひきしまった演奏で、組曲版では味わえない充足感があった。

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