July 24, 2014

KKBOXと日本のストリーミングサービス

●オールジャンルの音楽ストリーミングサービスというと、今のところワタシはソニーのMusic Unlimitedを使用しているのだが、台湾発で日本国内ではKDDIが資本参加しているKKBOXというサービスもある。KKBOXはアジアで1000万ユーザー、課金ユーザー200万人を持つというから十分に大手のサービスだが、ぜんぜん知らないという方も少なくないだろう。ワタシもよく知らなかった。でも、CEOのクリス・リン氏のインタビュー(AV Watch)を読むと、なかなか興味深い。形態としては似てるけど、考え方の面で欧米の最大手Sportfyとの違いも見えて、もしかするとストリーミングサービスというのはグローバル一辺倒ではなくて、アジアならアジアのローカルな方法論があるのかも、と思えてくる。
●で、そのインタビューでリン氏が日本の市場について語っている部分がおもしろいので引用しておこう。

 日本の音楽業界は、他国ほど急速に売上げが低下していません。アメリカも含め、他の国々はCDの売上げが恐ろしく短期間で落ちていきました。だからそうした国々の音楽業界の人々は「急いで他のボート(ストリーミング・ミュージック)に乗り換えなきゃ!」と感じたわけです。
 しかし日本の音楽業界のボートは、沈んでいるわけではない。いまはまだ、ちょっとした水漏れがある程度です。なので中の人々は、一生懸命パッチあてをしている。しかし、水漏れが止まるわけではなく、いつかは沈むんです。遅かれ早かれ、ストリーミング・ミュージックサービスがなければ、音楽の売上げは落ち続けるだけだ、と理解するでしょう。だからいつかは「わかった。どれでもいい。KKBOXでもSpotifyでもレコチョクでもいいから、ストリーミング・ミュージックへと楽曲を提供しよう」ということになる。

●最近、「CDが売れない」みたいなことがオートマティックなフレーズとして口から出てきがちなんだけど、外から見ると逆なんすよね。日本は依然としてCDが売れてしまっている。以前ここでレポートしたベルリン・フィルの自主レーベル記者会見でも「(アメリカやイギリスと違って)日本とドイツではいまだにCDを買う人がたくさんいる」みたいな話が出ていたっけ。
●インタビュー中では、日本でCDがまだ売れ続けているのはストリーミングサービス側で十分なコンテンツがそろっていないから、という前提が共有されている(もちろんここでのコンテンツはみんなが聴きたい邦楽の話であって、洋楽、ましてやクラシックなど眼中にないだろう)。別に日本人はポリカーボネートの円盤を信仰しているというわけではない、たぶん。

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