August 18, 2014

「アルゲリッチ 私こそ、音楽」


●試写でドキュメンタリー映画「アルゲリッチ 私こそ、音楽」を見た。監督はアルゲリッチの三女、ステファニー・アルゲリッチ。家族でなければ絶対に撮れない映像のオンパレードで、圧倒されっぱなしの96分だった。あまりの濃密さ、あけすけさにたじろぐほど。なにしろ、この映画のために撮影した映像だけではなく、古いプライベートなホームビデオの映像までたくさん用いられている。「ある時期はミシェル・ベロフが私の父親代わりとなった」みたいなナレーションに合わせて、アルゲリッチとベロフが仲睦まじくする映像がポーンと入る。音楽家アルゲリッチの顔ももちろん興味深いものなんだけど、それ以上に母アルゲリッチの素顔が強烈なインパクトを残す。
●アルゲリッチにはそれぞれ父親の異なる3人の娘がいる。3人全員がこの映画に登場する。長女はヴィオラ奏者のリダ・チェン。父はロバート・チェン。唯一音楽家になった娘だが、母と暮らしたことはない。次女はアニー・デュトワ。シャルル・デュトワとの娘。三女が監督のステファニー・アルゲリッチで、父はスティーヴン・コヴァセヴィッチ。ステファニーは父と暮らしたことはない。ずっと母親のもとで育ち、いつもツアーに付いて世界中を連れられ、学校にはときどきしか行けなかった。家族そろっての夕食や公園での遊びといった平凡な思い出が片手の指で数えられるほどしかなかったという。とても複雑な家庭環境なんだけど、本人たちにとってはそれが生来の環境であり、見ているとだんだんありうる家族の形として、むしろ共感がわいてくる。アルゲリッチがステファニーに向ける表情は母親そのもの。大らかで慈しみに満ちている。一方でいまだに本番直前の舞台袖ではナーバスになって「今日は弾きたくない」とかぶつぶつつぶやいている。
●父スティーヴン・コヴァセヴィッチも登場するんだけど、いい人オーラ全開で、アルゲリッチのパートナーであった姿が想像できない。娘に戸籍上の認知の手続きを求められて、書類と電話と格闘しておろおろする父としての姿が味わい深い。しかし若い頃の演奏姿は激しくカッコいい。
●母親と娘3人がそろって戸外でリラックスしている映像があって、みんな顔立ちが違うのに、髪型は母親とほとんどいっしょだなとに気づく。ステファニーが母の母国アルゼンチンを訪ねるシーンもいい。これは血筋の物語なので。9月27日公開(全国の上映予定)。

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