September 11, 2014

ルネ・マルタンを囲む会。ラ・フォル・ジュルネ2015、2016、2017のテーマ

●来日中のルネ・マルタンさんを囲む会に出席して、来年以降の「ラ・フォル・ジュルネ」について、ざっくばらんとした話を聞くことができた。正式な決定ではなく、構想段階の話という前提で、話の内容をオープンにしてよいということなので書いておくと、2015年のテーマは「パッション」、2016年のテーマは「ネイチャー」、2017年のテーマは「ダンス」。さらに2018年のテーマは「エグザイル」なんてどうだろうか、というアイディアが披露された。
●まず、来年のテーマが「パッション」なのは、東京だけではなくナントも同じ。今後は特定の作曲家や楽派をテーマにするのではなく、もっと大きな枠組みのテーマを設定したいということだが、それはナントでも同様であって、当初は来年に「1685年 ~ バッハ、ヘンデル、スカルラッティ」というテーマを予定していたが、それを「パッション」というテーマに変えたのだとか。「パッション」というのは、まずイエス・キリストの受難(パッション)のことであり、同時に世俗的な感情としての情念(パッション)でもあって、来年のナントでは宗教曲と世俗曲と両方の「パッション」がテーマになる。バッハ、ヘンデル、D.スカルラッティ、ヴィヴァルディのバロックから、C.P.E.バッハあたりまで。
●で、東京でも「パッション」なんだけど、東京は5000席の大ホールもあるから、さらに拡大して、ナントでの「パッション」に加えて、ロマン派以降の音楽の「パッション」も含まれる。たとえばベルリオーズの幻想交響曲とか、ベルクの抒情組曲とか、シェーンベルクの「浄夜」等々。
●なるほど、そういう手があったか、と思う。これは願望なんだけど、東京は小さなホールではバロックの「パッション」を中心にして、巨大ホールではロマン派中心、名曲中心の「パッション」みたいな形にすれば、ナントで練りこまれたアイディアをそのまま東京に持ってこれるかもしれない。なにしろ前回は、せっかくナントで「アメリカ」という刺激的なテーマがあったのに、東京が「総集編」になってしまい激しく落胆したのだ。東京では、5000席のホールAを埋めることのできるプログラムは非常に限られている一方で、小さなホールはどんな珍しい作品であっても集客に心配はない(というか席数が少ないから全体にほとんど影響しない)という、両極端の状況がある。だったら、それに対応したプログラムの組み方があってもいい。
●2016年は「ネイチャー」。これはネタは無尽蔵だ。マルタンさんの口から出た曲目を挙げると、ベートーヴェンの「田園」、R・シュトラウスの「アルプス交響曲」、ヴァレーズの「砂漠」、ルベルの「四大元素」、ラウタヴァーラの「カントゥス・アークティクス」(鳥とオーケストラのための協奏曲)、さらにトリスタン・ミュライユ、武満徹、等々。つまり、こういった抽象的なテーマ設定にすることによって、いろんな時代の作品を同時にとりあげたいということのよう。
●2017年の「ダンス」では、ラモー、リュリ、バッハのバロック舞曲、ロマン派のワルツ、バレエ、民族舞曲、タンゴ、20世紀の舞曲などのキーワードが挙がっていた。
●2018年の「エグザイル」(亡命者)では、ショパン、スカルラッティ、ラフマニノフ、バルトーク、マルティヌー等々。現代の中国出身の作曲家も。
●とまあ、来年の話をすれば鬼が笑うどころか、2018年までの話が飛び出した。マルタンさんはとても楽しそう(わかる)。もちろん、アイディアから現実のプログラムが組まれるまでの間にはいろんな段階があるわけで、これらがどれだけ実現するかはわからない。そもそも「パッション」=「受難」というのは大半の日本人には伝わらないことなので、そこに一段階なんらかの工夫が必要になるのかもしれない(し、あるいは必要ないのかもしれない)。

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