March 10, 2015

METライブビューイング「ホフマン物語」

●9日は東劇でMETライブビューイング「ホフマン物語」。なんといっても作品がすばらしい。悲劇とも喜劇とも異なるオペラ的な類型に留まらない、暗黒の幻想譚。オムニバス形式で詩人ホフマンの見果てぬ恋を描くわけだが、特にアントニアの幕にはぞくぞくする。歌うことで死ぬというアンチオペラ的なヒロインや、邪悪な「ミラクル博士」(!)といった設定が秀逸。オッフェンバックの音楽もすばらしすぎる。
●「ホフマン物語」は昨年Bunkamuraの大野和士指揮フランス国立リヨン歌劇場(ロラン・ペリー演出)のすぐれた舞台を見たばかりだが、METはバートレット・シャーの演出。十分なリソースを注ぎこめるMETならではの舞台で、こちらも見ごたえあり。リヨン歌劇場ではオランピア、アントニア、ジュリエッタ、ステッラの四役をパトリツィア・チョーフィが一人で歌った。このMETの舞台でも当初ヒブラ・ゲルツマーヴァが四役を歌う予定だったが、オランピア役はエリン・モーリー、ジュリエッタ役はクリスティン・ライスに譲ることに。これは大正解では。エリン・モーリーのオランピア役(機械仕掛けの少女)は歌も演技も見事。ゲルツマーヴァのオランピアなんて想像がつかない、体格的に。そもそも「4人が本当はひとりである」ってことは最後に歌詞で歌って明かされるんだから、なにも無理して一人で歌わなくても、と思ってしまう。
●ホフマン役はヴィットーリオ・グリゴーロ。甘い声が心地よく、キャラクターも役柄に合っている。悪魔の化身はトーマス・ハンプソン。本来適役だったんだろうけど、さすがに声も容貌も老いて、悪魔というよりはお爺ちゃんに。幕間インタビューでカメラに向かって孫娘に挨拶していて、リアルお爺ちゃんだったのだ。時は流れる。ニクラウス役はケイト・リンジー。ボーイッシュな雰囲気を出せるということでズボン役の多い人なんだけど、METの舞台でみかける女性歌手のなかでは屈指の美女だと思う。なんだか不条理だなあ。
●オランピアは機械仕掛けの人形なので、本質的には量産可能のはず。そんなことを示唆するように、舞台上には実際のオランピア以外にオランピアの姿をしたダンサーがあらわれたり、マネキンの部品が見えたりする。ホフマンは「人形に恋したっていいじゃないか」と歌う。これって「エヴァンゲリオン」の綾波レイだなと思う。

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