September 8, 2015

東京交響楽団記者会見、ジョナサン・ノット音楽監督の任期を2026年3月まで延長

東京交響楽団記者会見、ジョナサン・ノット音楽監督の契約を2026年3月まで延長
●昨日の東京交響楽団記者会見には驚いた。音楽監督のジョナサン・ノットは、なんと、2026年3月まで任期を延長。まさかのあと10年。実は記者に配布された資料には「2020年3月まで」とプリントされていた。これだったら3年間の契約延長だ。ところが、会見前夜になって、ノットはメールで「もっと契約を延長したどうか」という「クレイジーな提案」を伝え、東響もこれを了承して会見6時間前に「2026年3月まで延長」するという契約が実現した。
●ノットは言う。「昨日、モーツァルトを指揮していて、なんとすばらしい演奏なのかと思った。だったらなぜ3年間だけの延長に留めなくてはいけないのか。このオーケストラとの関係をもっと深めていかなければならない」。会見はミューザ川崎シンフォニーホールのステージ上で開かれた。通常なら楽員たちが座る場所に記者が座り、譜面台に会見資料が置かれている。「東京交響楽団とのすべてがエキサイティングで、クレイジーだ。この会見も! もう東京は自分にとって第二の故郷。ここにいるだけで大きな喜びを感じる。すばらしいオーケストラとコンサートホール、そして聴衆のみなさん」。
●なんでもノットは東京で家探しをしようかと考えているといった先走った話も飛び出してきて、並々ならない意欲で今回の決断に至った様子が伝わってくる。それにしても2026年っすよ! どれだけ未来なのか。今、充実しまくっているノット&東響コンビが、あと10年続く。いや10年もあればその間にはずいぶんいろんなことも起きるだろうけど、どんな形で両者の関係が成熟していくのか。東響の音楽監督は本当に音楽監督らしくたくさん登場してくれるので、長期の契約延長には重みがある。
●ノットの魅力のひとつはプログラミングの妙。2016年度のシーズンラインナップも発表された。たとえばシェーンベルクの「ワルシャワの生き残り」とブラームスの「ドイツ・レクイエム」が組み合わされていたり、リゲティとパーセル作品を交互に演奏してからR・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」が演奏されたりする。一方で、ブルックナーの交響曲第8番のみという重厚な選曲もある。個々のプログラムを見ると凝っている一方で、メイン・プログラムには案外とオーソドックスな定番曲がすえられていて(そういえばこの前の「運命」もスゴかった)、幅広い聴衆に受け入れられるものになっているところがいい。
●また、創立70周年記念事業として同コンビでヨーロッパ・ツアーを行なう。ウィーンをはじめ、5か国5都市。プログラムは2種類で、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲(イザベル・ファウスト)、ショスタコーヴィチの交響曲第10番(東響日本初演作品)のAプロ、武満徹「弦楽のためのレクイエム」(東響が委嘱初演した作品)、ドビュッシーの交響詩「海」、ブラームスの交響曲第1番のBプロ。それぞれツアーに先立って国内でも演奏される。
●もうひとつ。2016年12月にはミューザ川崎と東京芸術劇場で、モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」(演奏会形式)も演奏される。ジョナサン・ノットがみずからハンマーフリューゲルを弾く。「私は演奏会形式のオペラが大好きなのです。聴衆のみなさんと向き合って演奏できるので」と、本当に楽しみにしている様子が伝わる口ぶり。なんというか、めでたい! そんな気分に浸れる会見だった。

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