September 15, 2015

広上淳一&N響のドヴォルザーク8番、ノット&東響のマーラー3番

●12日昼はN響C定期へ。広上淳一指揮でラフマニノフのピアノ協奏曲第3番(ニコライ・ルガンスキー)、ドヴォルザークの交響曲第8番というプログラム。ルガンスキーは盤石のソロ。明瞭で端正だが情感に不足はない。鮮やかに弾き切って、間髪入れずにブラボー多数。ドヴォルザークは弦楽器の深く重厚な響きと鳴りっぷりのいいブラス・セクションが印象的な快演。ヴィオラのトップは川本嘉子さん? 以前にも感じたことなんだけど、NHKホールで聴くシーズン開幕のN響は、どこかサウンドがリフレッシュされているような気がする。気がするというのは「久しぶりのNHKホールだから」ということで本当に気がするだけかもしれないし、そうでないのかもしれない。
●この日はダブルヘッダーを敢行して、夜はサントリーホールでノット&東響。マーラーの交響曲第3番のみのプログラム。先日、「ノット時代があと10年続く」という驚きの記者会見があったばかりで、それでこの日のマーラーが並の演奏だったらどうしようという一抹の不安をどこかで抱えていたのだが、第1楽章が始まったとたんにそんな杞憂は消え去った。冒頭の決然としたホルンから豊かなすばらしいサウンド。張りつめた空気のなかから精彩に富んだ音楽が湧き出てくる。藤村実穂子さんの深く柔らかな声が別世界へと誘う。P席に女声合唱がいるのに児童合唱の姿が見えず、ビムバム隊はどこから出てくるんだろうかと訝しんでいたら、いつのまにか2階客席R側後方に陣取っていた。すぐ後ろから聞こえてきてびっくり。天使感、満載。終楽章最後の和音がとても美しい響きで聴き惚れる。ノットのソロ・カーテンコールあり。
●マーラーの3番について、思ったことあれこれ。その1。特に第1楽章だけど、第7番を先取りしているかのようなパロディ性を感じる。トロンボーンの長大なソロ、4人全員がピッコロに持ち替えるフルート・セクション、交響曲の第1楽章にしては休符の多い第1ヴァイオリン……。その2。冒頭主題の後、しばらくしてバスドラムが先導するのは葬送行進曲だろうか。だとすると、マーラーは第1番「巨人」第3楽章でも第2番「復活」第1楽章でも葬送行進曲を書いていて、この「書かずにいられない感」。さらに第5番の第1楽章も。その3。終楽章について。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第16番第3楽章へのオマージュといえばいいのか、パクリといえばいいのか。この楽章からはずっと強引なまでの肯定感を受け取っていた。あまりの力強さに猜疑心を覚えるほどの全面的肯定。ところがノットはプログラム冊子のインタビューで、これを「深い憂愁を帯びた幕切れ」と形容する。そういわれてみると、そう聞こえるだろうか。どうかな?

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