May 17, 2016

尾高忠明&N響、小曽根真とチック・コリア

●15日は尾高忠明指揮のN響定期で、ソリストに小曽根真とチック・コリア(NHKホール)。この日は代々木公園のタイフェス(いつもスゴい人出)と重なっていたため、NHKホールへの迂回路ができていた。ちなみに前日はこちらも恒例らしいゾンビウォークと重なっていたのが、時間帯はずれていた模様。
●プログラムは前半に武満徹の「波の盆」とモーツァルトの2台ピアノのための協奏曲、後半にエルガーの変奏曲「謎」(エニグマ)。モーツァルトで小曽根真とチック・コリアのふたりが舞台に登場したとたんに雰囲気ががらりと変わる。いきなりスマホを取り出して自撮りするチック・コリア。演奏も自由自在。事前に会場内で「モーツァルト作品における即興の精神、ソリスト自身の音楽的背景、そして協奏曲での元来の伝統を踏まえ、第1楽章と第3楽章のカデンツァでソリストによる即興演奏を行います。この即興は、チック・コリアによって作曲された短いモティーフに基づくものです」と案内が掲示されていたが、カデンツァに限らずどんどん装飾・変形が加えられていた。カデンツァももちろんモーツァルト的なスタイルに留まるものではなく、ジャズのテイストで痛快。なお、スコア上でオプションの指定となっているトランペット、ティンパニ、クラリネットは省略されていた。
●客席は大いに盛り上がって、アンコールにチック・コリアの「スペイン」。即興的なパッセージに続いて、ロドリーゴのアランフェス協奏曲の主題が浮かび上がってきた。途中でチック・コリアが客席に手拍子を求めると、(推定)4分の1くらいのお客さんがノリノリで反応。演奏後もしっかりスマホで撮影するチック・コリア。ちなみにワタシはぜんぜんチック・コリアを知らないので、この曲が有名曲だというのを後で知った。さっそく今、Apple MusicでLight as a Featherに収録されてるオリジナルの(っていうの?)「スペイン」を聴いてみている。あ、なんだ、これ知ってるじゃん! どこかで聴いてる。便利な世の中だなー。
●後半はマエストロ得意のエルガー。端正ながらも情感豊かな「エニグマ」を堪能。自在なモーツァルトの後に聴くと、この格調の高さ、高貴さが一段と際立つ。ところで「エニグマ」の第13変奏「ロマンス」では登場人物が *** と伏字になっている。これは草稿にL.M.L.と記されていたのが消されていることから、もともとはLady Mary Lygonを指し、当時彼女がすでにオーストラリアへと旅立ってしまっていて許しが得られなかったから伏字にした、というのがいちばん納得のいくすっきりした説明だと思っている(異説あり)。で、この曲のクラリネットがメンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」を引用していることを曲目解説を読んで今さら気づく。言われてみれば、このクラリネットに続く弦楽器も波っぽいし、これはきっと船旅。どうして今まで気がつかなかったんだろう。なんか悔しい。

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