July 26, 2016

フェスタサマーミューザKAWASAKI 2016開幕、ジョナサン・ノット&東響

●今年もフェスタサマーミューザKAWASAKIが開幕。ミューザ川崎を舞台に首都圏のオーケストラが続々と登場する。23日はその開幕公演であるジョナサン・ノット指揮東京交響楽団の公演へ。いつも東響はこの音楽祭のホスト・オーケストラとして開幕公演と閉幕公演の両方に登場するのだが、ノットが同音楽祭に出演するのは初めて。やはり音楽監督が指揮台に立ってくれると期待度はあがる。
●基本的にこの音楽祭は名曲中心のプログラムで、チケット価格もぐっと抑えられているフレンドリー路線なのだが、さすがにノットは興味深いプログラムを組んでくれた。前半にヴィラ=ロボスの「ニューヨーク・スカイライン・メロディ」というごくごく短い小品と、アイヴズの「ニューイングランドの3つの場所」、後半にベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。おもしろい。メイン・プログラムに「田園」を据えるにしても、その前に20世紀のニューヨークやボストン等の景色を配置することで、プログラムが時空を超えたひとつの旅のように思えてくる。都市と田舎、新大陸と旧大陸、20世紀と19世紀。
●ヴィラ=ロボスにこんな曲があることすら知らなかった。もともとはピアノ曲で、マンハッタンの摩天楼の稜線を方眼紙に書き取って、それを五線譜に置き換えたものということらしいのだが、じゃあケージばりにランダムに生成された容赦ない不協和音が響くかといえばぜんぜんそうではなく、すっかりヴィラ=ロボスの音楽語法に収まっている感。ここからノットとしては拍手なしでアイヴズにつなげたかったようだが、少しの拍手をはさんでアイヴズへ。並べて聴くと断然アイヴズのほうがヤンチャしてる。
●後半は「田園」(休憩なしで3曲続けても大した長さにはならなかったはずだが、客層も考えてか、休憩あり)。ノットのベートーヴェンは豊潤でふくよか。緊張感に貫かれたまったくルーティーンではない「田園」で、しなやかなフレージングが印象的。大活躍する木管群のソロも精彩に富んでいた。
●「田園」の1楽章が終わったところでパラパラと拍手が沸き起こった。首都圏ではめったに出会えない光景なのだが、これは着実に新しいお客さんを呼べている証拠でもあって、頼もしいかぎり。初めて聴いた「田園」がこれだったとすると、幸福な出会いというほかない。

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