ドミノ・ピザ
September 16, 2016

パーヴォ・ヤルヴィ&N響のムソルグスキーと武満

●しばらく週刊「パーヴォ&N響」祭り。15日はサントリーホールでムソルグスキーと武満徹という、なんだか遠そうなふたりの作曲家を組み合わせたプログラム。前半にムソルグスキーの「はげ山の一夜」原典版、武満徹の「ア・ウェ・ア・ローン2」と「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」、後半にムソルグスキー~リムスキー=コルサコフ編の「ホヴァンシチナ」第4幕第2場への間奏曲「ゴリツィン公の流刑」、ムソルグスキー~ラヴェル編の組曲「展覧会の絵」。つまり、ムソルグスキー作品は彼本来のオリジナルとリムスキー=コルサコフの編曲、さらにラヴェルの編曲と三態が並ぶ趣向。おもしろい。
リムスキー=コルサコフ●で、「はげ山の一夜」原典版。リムスキー=コルサコフが洗練されすぎた筆を入れる前の粗削りさが魅力……だとは思う、たしかに。でもむしろ痛感するのは、こんなゴツゴツした素材からあんなにツルリとした完成品を作ったリムスキー=コルサコフすごすぎ。あの一般的な編曲というか再創造がどんなによくできているか。この原典版だけだったら、この曲はきっと埋もれた珍作で終わっていたのでは。先にリムスキー=コルサコフの滑らかな完成図を知っているから、この原典版もおもしろがって聴けるけど、そうでなかったら果たしてどうだろう。特にリムスキー=コルサコフ版は最後にすがすがしい夜明けが訪れて魑魅魍魎の世界とコントラストをなすのが効果抜群って気がする。
ムソルグスキー●でも、そんなアマチュアっぽいムソルグスキーと、職人技を極めたようなリムスキー=コルサコフとで、どっちがより演奏され、共感されているかというと断然前者だと思う。ムソルグスキーは作品数は限られているけど、打率はかなり高い。「展覧会の絵」「はげ山の一夜」「ボリス・ゴドゥノフ」「ホヴァンシチナ」「死の歌と踊り」「蚤の歌」……。一方、リムスキー=コルサコフは「シェエラザード」みたいに突出した人気作はあるものの、交響曲第1番~第3番、ピアノ協奏曲、「雪娘」「サトコ」「モーツァルトとサリエリ」「金鶏」「皇帝サルタンの物語」等々といった数あるオペラなど、多くの作品が演奏機会に恵まれているとはいえない状況。なに言ってるんだかわからないけどとにかくスゴそうな酔っぱらいのオヤジとなんでも知っててなんでもできそうな大先生がいるんだけど、人が寄ってくるのは酔っぱらいのほう、みたいなイメージ。
●この日はソニーのレコーディングが行われていた模様。最後の「展覧会の絵」は壮麗なスペクタクル。プロムナードの冒頭トランペットからスカッと抜けるような快演。「キエフの大門」の豪快な鳴りっぷりに客席がわき上がった。

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