November 24, 2016

マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団のブルックナー

●22日はNHK音楽祭でマイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団(NHKホール)。ショパンのピアノ協奏曲第2番(ユジャ・ワン)とブルックナーの交響曲第7番。前回来日ではマーラーの5番でスーパー・オーケストラぶりを発揮してくれたサンフランシスコ交響楽団だけど、このコンビからは遠そうなブルックナーだとどうなるか、というのが最大の関心。この数年にわたる「意図してブルックナーの7番を聴く」という勝手ツィクルスの総決算のつもりで。
●ユジャ・ワンのショパン。この曲では持ち味の敏捷性、切れ味、瞬発力が前面に出ることはないが、みずみずしく清新なショパンを堪能。これから年齢を重ねていったときにどうなるかを少し予感させる。アンコールはシューベルト~リスト編の「糸を紡ぐグレートヒェン」。十分すばらしいんだけど、ここでバリバリの超絶技巧曲で客席を熱くしてくれれば、と思わなくもない。
●で、問題のブルックナー。いやー、もうまったく聴いたことがないブルックナー。「勝手ブル7チクルス」の前回はブロムシュテット&バンベルク交響楽団で、圧倒的な伝統の力にノックアウトされたのだが、今回はその正反対。明るくきらびやかなサウンドで精緻に音響設計された、ゼロから生み出したような最新モデルのブルックナー。脱教会、脱オルガン、脱ドイツの森、脱野人、脱原始霧でフルモデルチェンジ。暗黙に期待されるあれやこれやをぜんぶ取っ払ってみたら、なんだか垢抜けた作曲家像が誕生した。この曲にこんな色彩感やスピード感、キラキラとした輝きがあったとは。特に第2楽章が印象的。シンバル、トライアングル入りのクライマックスが荘厳でも重厚でもなく、透明感があって爽快。さわやかブル7。
●すばらしいベートーヴェンやすばらしいモーツァルト、すばらしいバッハに多様性がありうるように、すばらしいブルックナーにもいろんなスタイルがあるんじゃないか……と期待していた気持ちを満たしてくれたという点では、最強に強まったブルックナーだった。しかし、一方で自分のなかではかなり消化不良な感もあって、瞬間瞬間のおもしろさを頼りに聴き通せても、大曲を貫く一本のストーリー性を感じ取るのは難しかった。できることなら、もう一回聴いてみたい、かな。

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