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March 13, 2017

低音デュオ第9回演奏会

●10日は杉並公会堂小ホールで低音デュオ第9回演奏会。松平敬(声)+橋本晋哉(チューバ/セルパン)のおふたりによる現代作品+古楽少々のプログラム。ランディーニの2曲、川浦義広「アクセス・ポイントI」 (2013 初演)、湯浅譲二「ジョルジオ・デ・キリコ」 (2015)、三輪眞弘「お母さんがねたので」 (2014)、山本裕之「細胞変性効果」(委嘱新作)、チコーニアの2曲、足立智美「超低音デュオ」(委嘱新作)、木ノ脇道元「TORERO」(委嘱新作)。新しい曲と猛烈に古い曲の両極端が並ぶ。知らない音楽にたっぷりと触れることができるのがこのユニットの魅力。
●いちばんおもしろいと思ったのは山本裕之「細胞変性効果」。奏者の発する音にPCを用いてディレイをかけ、それを相手方のヘッドフォンに伝えるという仕掛けになっていて、そこでふたりの間にずれが生まれる。ディレイは一定ではなく、変化しているようで、曲名が示唆するような生物的な変性を連想させる。これって演奏者はヘッドフォンの音だけが聞こえているんだろうか。相手方の生の音もうっすら聞こえてしまって混乱しないのかな? テキストの意図までは汲めずに聴く。
●三輪眞弘「お母さんがねたので」は題材に気付かずに聴き始めて、途中でこのテキストがなんだったかに思い当たった。最初にチューバが演奏し、これをラジカセ(懐かしい)で録音する。このチューバがなんらかの日本語を発話しているように聞こえる。で、その抑揚だけでも、これが楽しそうなものではないことは伝わってくる。続いて録音を再生して、声がチューバの演奏を模倣するように言葉を載せていく。その途中で、この言葉がある高校生が自ら命を絶つ際に残した遺書であったことに気づく。遺書の文面の一節に自身の発話に関するくだりがあったと思う。最後の一言だけはチューバの模倣ではなく、ストレートに発声される。この事件は、当初は学校でのいじめ事件として報道され、その後、母親の異常性へと焦点が移っていったようである。が、事件についてはよく知らない。そこに至るプロセスにどんな真実があったにせよ、絶対にあってはならないことが起きてしまったという重苦しい現実の一端に触れてしまうと、もう自分はそのことばかりが頭のなかに居座ってしまう。なにしろそれは創作物ではなく、生々しい現実なので。終演後もずっととりとめなく考えが漂って、抑えきれない。演奏が終わって笑いが起きたのはなぜなんだろう。
●アンコール相当として演奏された木ノ脇道元「TORERO」は「正式には『21世紀の男らしさについて』」と題されていて、「ポップソング的なものを」という依頼にこたえて書かれたのだとか。ポップソングじゃないけど、みんなが知ってるオペラの有名曲だった。曲名で見当がつかなくて悔しい。

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