March 22, 2017

インバル指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

●21日は東京芸術劇場でエリアフ・インバル指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団。旧称はベルリン交響楽団。2006年からこの名称に変わっている。1952年、旧東独に設立された楽団だが、現在のサウンドはとても輝かしくて、すっかり垢抜けている感じ。重厚さと機能性、壮麗さを兼ね備えたすばらしいオーケストラだと実感。インバルが首席指揮者を務めていたのは2001年から05年までとけっこう前の話なんだけど、そうとは思えないくらい指揮者とオーケストラとの間に緊密さを感じる。コンサートマスターは日下紗矢子さん。
●プログラムはメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(五嶋龍独奏)とマーラーの交響曲第1番「巨人」。前半は五嶋龍さんの持ち味が存分に発揮されたメンデルスゾーン。冒頭主題からとても情感豊かで豊麗。芯の強い潤いのある音色、雄弁な感情表現、ここぞというところでぐっと「見得を切る」かのような思い切りのよさが魅力。鮮やかなソロに場内は喝采。カーテンコールでヴァイオリニストが楽器を持たずに出てくる光景は、パリ管弦楽団でのジョシュア・ベルでも見たっけ。アンコールがないってはっきりしていて吉。メンデルスゾーンで充足。
●後半のマーラー「巨人」はインバル得意のレパートリー。「自家薬籠中の物」とはまさにこのことかというくらい、綿密に設計された壮絶なスペクタクル。ディテールまで練りに練って、仕上げ磨きをなんども繰り返したであろう解釈なんだろうけど、ルーティーンを聴かされている感は皆無。第1楽章と第2楽章をほとんどアタッカでつなげて演奏するのが、なんだか前半のメンデルスゾーンと相似形をなすようでおもしろい。第4楽章の激情の奔流はスリリングだが、過度に咆哮せず、絢爛たるクライマックスへ。最後にホルンは立奏。まろやかで深みのある音色に聴きほれてしまう。
●アンコールなしで終演。オーケストラが退出した後、いったん拍手は止みかけたもののパラパラと途切れることなく続き、次第にふたたび勢いを増して、インバルのソロ・カーテンコールへ。そうこなくては。

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