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June 2, 2017

ショーソンと「アルテュス王」とワーグナーと

●「アルベニスとマーリンとワーグナーと」に書いたように、アルベニスはワーグナーの強い影響のもと、オペラ「マーリン」を書いた。マーリン、すなわちアーサー王の魔術師。作品は「マーリン」「ランスロット」「ギネヴィア」からなる「アーサー王伝説」三部作の一作として構想されていたが、計画は頓挫してしまい、結局「マーリン」が完全な舞台上演として初演されたのは2003年になってから。
●で、アーサー王関連のオペラといえば、アルベニスよりは知られていると思われるのが、ショーソンの「アルテュス王」(アーサー王)。登場人物名がフランス語になるととたんにわかりづらくなるので、以下英語からのカナ表記を原則として書くけど、王妃ギネヴィア(ジェニエーヴル)を巡るアーサー王(アルテュス)と騎士ランスロットの対立、ふたりの和解とアーサー王の死までが描かれる。ショーソンといえばワグネリアン。やはりこの作品もワーグナーの強い影響下にあり、「トリスタンとイゾルデ」や「パルジファル」との近さはよく指摘されるところ。ちなみにショーソンは自分で台本も書いていて、そのあたりもワーグナー的だ。便利なもので、今はこんな珍しい作品でも聴こうと思ったら即座に配信やダウンロードで聴ける。アルミン・ジョルダン指揮フランス放送フィルの録音を、いま途中まで聴いているところなのだが、たしかにワーグナー的というか「トリスタンとイゾルデ」的で、サービス精神旺盛なアルベニス「マーリン」に比べると、こちらは格調高いというのが第一印象。もっともショーソンは「脱ワーグナー化」を標榜していたのだが。

●ここのところ立て続けに書いているブルフィンチ著の「中世騎士物語」関連エントリーで述べてきたように、トリスタンとイゾルデやパルジファルといった登場人物もアーサー王伝説の大きな枠組みのなかに取り込まれており、その意味ではアルベニスもショーソンも題材から音楽までワーグナーとともにゆるかに結ばれた一大サーガをなしているといえるのかもしれない。あと、現代イギリスの作曲家ハリソン・バートウィスルのオペラ「ガウェイン」が以前ザルツブルク音楽祭で上演されていて、こちらの内容はぜんぜん知らないんだけど、円卓の騎士ガウェインの話なんすよね?
●先日のアルベニスの記事に対してfacebookページで吉田光司さんから「アーサー王伝説万華鏡」(高宮利行著/中央公論社)を教えていただいたのだが、ここにあるショーソンの「アルテュス王」上演史に関する記述がおもしろい。「アルテュス王」の初演を実現しようといろんな劇場に話を持ちかけるのだがうまくいかなかったところ、同じころにアーサー王のオペラを書こうとしていた友人アルベニスが「アルテュス王」をプラハに売り込むのに成功したというんである。ところがショーソン自身がパリから遠く離れた地での初演を嫌ったために、これは実現しなかった。で、そうこうするうちに、ショーソンは不運な自転車事故によって急逝してしまう。ようやく死後4年経ってから「アルテュス王」はベルギーのモネ劇場で初演され、これは大成功を収めたという。作曲者の生前に初演が実現しなかったという点では、ショーソンの「アルテュス王」もアルベニスの「マーリン」も同じ運命をたどっているわけだ。

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