Booksの最近のブログ記事

December 11, 2019

「ラ・ボエーム」原作が光文社古典新訳文庫から刊行

●これまで邦訳がなかったと思うのだが(たぶん)、アンリ・ミュルジェール著の「ラ・ボエーム」が光文社古典新訳文庫から刊行された。「ラ・ボエーム」といえば、もちろん、プッチーニのオペラを思い出すわけだが、オペラの対訳はあっても、その出発点である原作を読めないもどかしさがあったわけで、これは朗報。
●いやー、なんでオペラのほうはあんな人気作なのに、原作がなかったんすかねー、さっそくポチッとな、と思って価格を見てギクリ。文庫本で1760円ということはページ数は……おお、672ページ! なんだそれは。このページ数に大いにひるんで、まずはいったん書店で手にしてみるかと思いなおす。そんなに厚いんだったらkindle版がほしいけど、しばらく待っていたら出るんだろうか。うーん、どっちなんだ、これは。
●Jリーグが感動的な幕切れ(←マリノス・ファン限定)を迎えたと思ったら、中二日で代表戦。EAFF E-1サッカー選手権が韓国で開催されて、まずは中国対ニッポン戦で始まった。しかしそんなにすぐに代表戦があるとは思わず、テレビの録画予約を忘れてしまう。DAZNに慣れた今、わざわざ録画を予約しなければいけない試合があることに不条理を感じる始末。慣れって怖い。国内組による実質B代表みたいなチームなので、気持ちが盛り上がっていないせいもあるかも。

November 29, 2019

十二国記「白銀の墟 玄の月」第3巻&第4巻 (小野不由美著/新潮社)

●さて、18年ぶりに出た「十二国記」シリーズの最新作「白銀の墟 玄の月」、先日の第1巻&第2巻に続いて、第3巻&第4巻も読み切った。いやー、長かった。読みやすいけど、長かった。第1巻と第2巻はストーリーがぜんぜん展開しなくて、ずーっと人探しをしていて、あっちを探したら見つからない、こっちにいるかと思って来てみたらやっぱりいなかった、みたいな出来事の連続だった。
●で、後半の第3巻&第4巻。どんどん話が動き始めた。そして、第4巻に入ると猛烈な勢いで話が畳まれる。なにしろ登場人物が多いので、最後は「えっと、この人はだれだっけ……?」みたいな事態にもなりがちだが、なんだか途中で物語の設計図が変更されてしまったかのような印象を受けるのはワタシだけだろうか。特に阿選と琅燦のふるまいに違和感が残っていて、「十二国記」世界観を揺るがすような大きな展開があったかもしれないのに、前半が長すぎてうやむやになってしまったような気が。でも、個別にいいシーンはたくさんあったので、読書の楽しみは存分に味わった。講談社X文庫ホワイトハート以来の付き合いという意味では、映画「スター・ウォーズ」に匹敵するくらいの気長なシリーズ。もっと読みたいけど、やっぱり話がどんどん動いたほうが「十二国記」らしいかな。

November 5, 2019

「秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由」(秋本治 著/集英社)

●世の中に「仕事術」を謳った本はいくらでもあるだろうが、これほど説得力のある一冊もない。なにしろ「秋本治の仕事術 『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由」(秋本治 著/集英社)だ。週刊少年ジャンプの「こちら葛飾区亀有公園前派出所」を40年間、全200巻に及ぶ連載を成し遂げた著者が、仕事の秘訣を語る。マンガ家ならずとも、仕事についての金言のオンパレード。特になにかを書いたり作ったりする人にとっては、深く共感する部分があったり、絶対にまねできない偉大さに圧倒されたりと、おもしろく読めるのでは。
●著者の仕事のスタイルでなにより印象的なのは、規則正しさ。「こち亀」主人公の両津勘吉のキャラ設定とはまったく違って、朝9時から19時までが勤務時間で、その間に昼食と夕食のための時間を1時間ずつとるというスタイル。アシスタントもみんな同じ時間で働いていて、タイムカードで出退勤を管理をする。残業はなるべく少なくする。休日もとる。しかも連載のストックを常に貯めておいて、急な予定にもすぐに対応できるという超優秀さ。考えてもみれば40年も週刊連載を続けられたんだから、〆切間際の火事場の馬鹿力なんて頼りにしているはずはないか。世の中、たいていの人は規則正しく働いているわけで、一見すると当たり前のことを言っているようでいて、「ネタがないと感じたことは一度もなかった」「デビューした後も苦しかった記憶はほとんどない」とさらりと書かれた一言に天才性を感じる。
●特にインパクトがあった言葉をいくつか。

「納期のサバを読まれたら それよりも早く仕上げて渡す」

これは神の領域。編集者には確実に刺さる。文字原稿でも編集者側はサバを読むものだが、それは編集者は複数の著者やプロジェクトを担当しているのに全員にギリギリで原稿を送られると進行が崩壊するから(校閲や組版がパンクする)。いろんな事情を勘案して、「本当の納期」が同じでも、著者ごとに異なる〆切を伝えたりすることもままあるはず。なのに、想定よりも早く原稿が送られてきたら……。

「無茶な仕事を振ってくる人も、その人なりの事情があるはず。別に怒るようなことではありません。相手の事情を察して受け止め、冷静に対処できるように、あらかじめこちらが余裕を持っていればいいだけなのです」

前項が神ならこちらは仏。一般に、編集者側の事情は著者側からは見えにくいもの。特に「組織の事情」みたいなものは、なかなかわからない。

「仕事をはじめる前にコーヒーを飲んで、テレビを観て、これをやって……などということはなく、とにかく座ったら描く」

もうひれ伏すしかない。自分の周囲でも仕事の早い人はみんなそんな感じ。準備運動とか儀式みたいなものがなくて、すっと本質業務から入るイメージ。

October 31, 2019

十二国記「白銀の墟 玄の月」第1巻&第2巻 (小野不由美著/新潮社)

●どうやら待っていてもKindle版は出ないようなので、待つのは止めて物理書籍で読んだ、待望の「十二国記」シリーズ新刊「白銀の墟 玄の月」第1巻&第2巻(小野不由美著)。いや、待望の、とは言ってみたものの、なにせ18年ぶりの新作なので、もはや待っていた感すらない。で、出たと思ったら原稿枚数2500枚超の大作。まずは全4巻中の第1巻と第2巻が発売された。
●「十二国記」がどんな話かを一言で説明するならば、中華風異世界ファンタジー。多くのファンタジーの舞台が中世ヨーロッパ風に設定されるのに対し、「十二国記」の舞台は中華異世界。神仙や妖魔がいて、王がいて、民がいる封建社会。おもしろいのは十二国の世界から見た別世界として、ワタシたちがいる現代日本が存在していて、まれに一種の天災として十二国世界と現代日本の間で人が流されることがあるという設定。シリーズのスタートは1991年。当初は講談社X文庫ホワイトハートから発刊されていて、ティーンエイジャーの女子が読者対象だったはずだが(そしてなぜかワタシはその頃から読んでいるのだがっ!)、やがて大人向けのレーベルに移り、出版社も変わった。でも本質的にはティーンが読めるファンタジーにちがいなく、いろんな過酷な出来事などがあっても一切生々しい描写はなく、真に迫った苦悩なども描かれないので、身構えることなく心地よく読める。そこがいい。そして、読んでいていつもどこか後ろめたい気持ちになるのは、講談社X文庫ホワイトハート時代から同じ(自分なんかが読んでいていいのかな……的な)。やっぱり「十二国記」はそうでなくては。
●そんなわけで、この「白銀の墟 玄の月」でも期待通りの「十二国記」ワールドがくりひろげられていて、すっかり寝不足になってしまった。ただし、話の展開はすごく遅い。どんどんと伏線が張られていくけど、一向に回収されない。もう少し大きく話が動くものと思っていたけど、まさかあれがああしてこうしてこうなるとは(←禁ネタバレ)。どう考えても第3巻と第4巻で驚天動地の展開が待ち構えているはず。早く続きを読みたい。

October 28, 2019

アガサ・クリスティ「春にして君を離れ」

●少し前にAERA dotの連載「鴻上尚史のほがらか人生相談」で、アガサ・クリスティの「春にして君を離れ」(ハヤカワ文庫)に触れられていた。これをきっかけに本がどっと売れたらしい。自分もつられて読んでしまったわけだが……なにこれ! おもしろい。ミステリではなく、まったくの普通小説。同じオリエント急行を舞台とした小説でも、殺人事件のほうとは違って、今日的な話なんである。
●主人公は裕福な女性で、理想の家庭を築きあげたことに満足している。娘の見舞いでバクダッドを訪れ、イギリスに帰る途中で友人にばったり出会ったことをきっかけに、身の回りの人々についてあれこれと思いを巡らせる。文体は三人称だが、ほとんどの場面が主人公視点で書かれている。夫、子供たち、友人について、ああいうところがよくない、考えが足りないと、ずいぶん手厳しい。みんな困った人たちばかり、でも自分はしっかり者。おかげで万事うまくいっている。だから、みんなから尊敬され、愛されている……。
●が、読み進めるうちに、どうやら主人公の現実解釈はひどく歪んだものではないかという疑いがわいてくる。つまり、一種の叙述トリックみたいな手法なんである。ひょっとして、この人はなんでも自分に都合よく解釈しているばかりで、むしろ周囲の人たちのほうこそ、思いやりがあり、賢いのではないか……。あー、いるいる、こういう人。
●クリスティの人間観察は鋭く、辛辣であるがゆえに痛快だ。でも、この話、最後はどうやって着地させるんだろう。このままだと最後は嫌なオバサンの話で終わってしまうのでは。しかし、クリスティが用意した結末は「これしかない」という納得のゆくもの。最後まで読むと、また一段と感心する。人を嘲笑うだけの話になっていないし、主人公に共感すら覚える。秀逸。

October 3, 2019

「なめらかな世界と、その敵」(伴名練 著/早川書房)

●最近読んだ小説のなかで、ずば抜けて強烈な印象を残したのが「なめらかな世界と、その敵」(伴名練 著/早川書房)。表紙絵がこんな感じなので書店では手に取りづらいが、全6篇からなる恐るべき短篇集。完全にSFというジャンル小説にとどまりながら、これほど新しく、今を描いた小説はないんじゃないか。
●秀逸なのは世界設定。表題作「なめらかな世界と、その敵」では、まず女子高生のなんでもないスクールライフが描かれるのだが、少し読み進めると、この世界ではだれでも自由意志によって並行宇宙を渡り歩くことができるとわかってくる。つまり、都合の良い現実を選択できる万能の人生を送っている。ところが、そんな世界で並行宇宙を移動する能力を失ってしまった人、たったひとつの現実を生きなければならない登場人物が出てくる。彼らを指して呼ぶには「乗覚障害」。この言葉にくらっと来る。ひとつの現実を生きる人間を障害とみなす世界観。そして、その舞台設定が正しく青春小説に結実していることに驚嘆する。
●「シンギュラリティ・ソヴィエト」は歴史改変小説。アメリカがアポロ計画に取り組んでいる頃に、ソ連が先んじてAIを開発していたら、という舞台設定。「ひかりより速く、ゆるやかに」で描かれるのは、走行中の新幹線が突然「低速化」するという事故で、車両内では時間の流れが2600万分の1の速度に低下する。新幹線内の修学旅行生たちは結晶化した時間のなかに取り残され、旅行を欠席した主人公の現実と切り離されてしまう。これも青春小説。巧緻。

September 20, 2019

「蜜蜂と遠雷」(恩田陸著/幻冬舎)

●今さらではあるんだけど、もうすぐ映画も公開されるということで、ようやく読んだ、「蜜蜂と遠雷」(恩田陸著/幻冬舎)。分厚い本だけど、読みだすと先が気になってあっという間に読める。小説の舞台となるのは芳ヶ江国際ピアノコンクールで、モデルとなったのは浜松国際ピアノコンクール。著者の綿密な取材が生きていて、音楽コンクールとはどんなものかを一般読者にきちんと伝えているというだけでも功績大。ときに「あ、この言葉は小川典子審査委員長の言葉なんだろうな」っていうのが透けて見えるくらい。
●基本的に音楽小説である以前に青春小説なので、文体は若者向け。登場人物もみんな若者か、若者視点で見た大人という描かれ方。だから、小説としては自分に向けられたものとは少し違うかなとは思うんだけど、各々のコンテスタントのキャラクター設定とか、本当によくできている。あと、音楽を言葉で表現することには常に困難がつきまとうはずなんだけど、この小説では主要登場人物が一次予選、二次予選、三次予選、ファイナルと進むにつれて、くりかえし架空の演奏に対するそれぞれ異なる言語表現が求められる。この難しさに小説家として正面から立ち向かっていることに感嘆するほかない。
●なにかの才能を競うタイプの物語では、「ある天才が出てきた」と思ったら「もっとすごい天才がでてきた」、さらに「まだまだ上を行く天才がいた」みたいに天才の価値がインフレ化していく。天才インフレーション理論と呼びたい。
●映画も見たい。
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●お知らせ その1。FM PORTの番組「クラシック・ホワイエ」、明日9月21日(土) 22:00-23:00の回で、オルガンの石丸由佳さんをお招きして、ニューアルバム「オルガン・オデッセイ」についてお話をうかがっている。ラジコプレミアムを使えば、全国どこからでも放送後オンデマンドで聴取可。
●お知らせ その2。ONTOMOの10月特集「秘密」に「大ヴァイオリニストたちの秘密~パガニーニ、クライスラー、エネスコ」を寄稿。ささやかなエピソード集。

August 22, 2019

「三体」(劉慈欣著/早川書房)

●ようやく読んだ、話題沸騰中の中国発本格SF小説「三体」(劉慈欣著/早川書房)。ふだんならまずSFなんて読まないような人も夢中になるという世界的な大ベストセラーで、オバマ元大統領も大絶賛とか。なにしろ、原文は中国語なのに、英訳版がヒューゴー賞長篇部門を受賞したというからびっくり。まさかアジア圏の小説が、本家本元のヒューゴー賞をとるとは。舞台は中国だし、登場人物も中国人というエンタテインメントが、アメリカでここまで受け入れられるということがスゴい。これが三部作の第一作なんだそうだが、三部作合わせて本国版は合計2100万部、英訳版が100万部以上の売上を記録しているそう。
●実は読み始めはしんどかった。なにしろ文化大革命によって科学者が粛清されたり、体制側に寝返ったりという痛ましい場面で始まるので、「そういうのを読みたいわけじゃなかったんだけどなー」と頭を抱えていたのだが、この場面を過ぎると、一気に本格SFになる。いまどき英語圏ではまず書かれないような古典的なテイストのSFで、あるところは著者が敬愛するクラークを思わせるし、あるところは奇想天外なトンデモ系の話になっている。題名は天体力学における「三体問題」に由来。三重星系における文明が出てくる。アイディア豊富で、大風呂敷の広げ方が痛快。音楽にたとえるなら、このご時世に堂々たるロマン派の大交響曲が発表されて、しかもそれがよくできていた、みたいな感じか(というと佐村河内守みたいだが、実際遠くはない)。
●ひとつ大爆笑したのが、小説内に登場するVRゲーム「三体」における、「人力コンピューター」。よくこんなことを思いつくなと思った。
●登場人物の多くは中国のエリート科学者なので、人名など日本人には読みづらいかもしれないが、読んでいる内に特に気にならなくなる。あまりあらすじを知らずに読んだほうがおもしろいはず。

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