June 23, 2017

佐藤卓史シューベルトツィクルス 第7回 人生の嵐 4手のためのピアノ曲

●22日は東京文化会館小ホールで佐藤卓史シューベルトツィクルス第7回「人生の嵐 4手のためのピアノ曲」。ツィクルスなんだけど足を運んだのは初めて。この日は佐藤卓史とゲスト川島基のふたりで4手のための作品を中心としたプログラム(ふたりは第11回と第10回のシューベルト国際コンクール優勝者)。プログラムは前半に序曲ト短調 D668、12のドイツ舞曲D420、8つのエコセーズD529、12のレントラーD681より現存する8曲、「序奏、創作主題による4つの変奏曲とフィナーレ」変ロ長調D968A、後半にアレグロ・モデラートとアンダンテD968(ソナチネ)、アレグロ イ短調D947「人生の嵐」、ロンド イ長調D951(大ロンド)。演奏会で4手ピアノを聴く機会が少ないので、なじみのない曲を一網打尽にできた感。演奏は見事の一語。歌心にあふれた自然体でのびやかなシューベルトを満喫。
●最初の序曲はオーケストラ版が現存していないのだが、本来あったのかどうかもよくわからず。オーケストラ版があったのかどうかはともかく、オーケストラ前提で書かれた曲なんだろなとは思う。ただオーケストラで演奏したとしても、もうひとつ起伏に富んだ展開が欲しいというか、楽想のサイズが足りていない気も。アレグロ・モデラートとアンダンテ(ソナチネ)は、普通に聴けば第1楽章と第2楽章だけで未完成の曲。未完成交響曲と同じように、数ある未完のままになった曲のひとつ、ということでいいんだろうか。シューベルトらしい抒情性はあるものの、やや簡潔すぎて存在しないフィナーレへの渇望感は薄い。
シューベルト●やはり作品的にはおしまいの2曲が断然おもしろい。「人生の嵐」というベタすぎるほどベタなタイトルが付いたアレグロはたしかに冒頭から嵐なんである。この葛藤と焦燥感。普段はウジウジしている感じの人があるとき突然思い立ったかのようなテンションの高さがシューベルト風味。で、普通に聴けば、これはソナタの第1楽章なのかなって思う。だったらこのイ短調のアレグロに、続けて演奏されたロンド イ長調(大ロンド)がセットになっていてもおかしくない。間に緩徐楽章が入って3楽章のソナタになるとか? 「人生の嵐」と「大ロンド」がセットで2楽章のソナタだっておかしくはないんだろうけど、もし続けて演奏するとなんだか「つながってない」感がするんじゃないだろうか。嵐がいきなり解決してるよー的なすっ飛ばし感が残りそう。
●成立の経緯のよくわからない曲とか、もっと大きな曲の一部かもしれない作品が多めだったので、謎解き要素のたくさんある公演だった。謎はあっても答えはない。ないから楽しい。

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