November 24, 2017

サイモン・ラトル&ベルリン・フィル来日公演記者会見

ベルリン・フィル来日公演2017記者会見
●いよいよサイモン・ラトル&ベルリン・フィルが来日中。公演に先立って22日、記者会見が開かれた。普通の記者会見とは違って長い3部構成になっていたので、ここに書き留めておこう。
●まず、最初に来日公演についての記者会見ということで、サイモン・ラトル、オーケストラのインテンダントであるアンドレア・ツィーツシュマン(写真右)、オーケストラ代表としてチェロ奏者のクヌート・ウェーバー(左)が登壇。ラトル「日本に来るとツアーに来ていることを忘れてしまう。みなさまの温かさは格別。私とベルリン・フィルとともに来日するのは今回が最後になる。プログラムにはなにか新しいことを提供できないかと考えた。最後の2シーズンで短い新曲を15曲委嘱して、自分たちはこれを『タパス』のシリーズと呼んでいた。そこからチン・ウンスクの作品を今回のツアーのプログラムに選んだ。彼女は韓国の作曲家だがベルリン在住でありベルリンの作曲家といってもいい。それから、このオーケストラでなにが聴きたいだろうかと考えて、ブラームスの交響曲第4番をまっさきに思いついた。この曲は私のキャリアのなかでも特に大切な曲。ストラヴィンスキーの『ペトルーシュカ』は『春の祭典』や『火の鳥』に比べると近年のベルリン・フィルではあまり演奏されていないので、私自身へのご褒美として選んだ」
サイモン・ラトル/ベルリン・フィル来日公演2017記者会見
●質疑応答で、「かつて、ベルリン・フィルの指揮台に立つのはお腹を空かせた虎の檻に入るようなものとたとえていたが、今ではどう感じているか」との質問に対して、ラトル「今だってベルリン・フィルはお腹を空かせた虎のような存在。ずっとそうであってほしい。触るとやけどをするようなオーケストラだ。彼らのうち、だれひとり自分の仕事だから演奏している人はいない。みんな自分が演奏しなかったら世界が終わると思って演奏している」
ベルリン・フィル・メディア記者会見2017
●第1部の記者会見が終わった後、第2部として今度はベルリン・フィル・メディアの会見に。こちらはベルリン・フィル・メディア取締役のロベルト・ツィンマーマン(左)とソロ・チェロ奏者のオラフ・マニンガーが登壇。ストリーミングパートナーにIIJ、テクノロジー・パートナーにパナソニックを得たことと、日本市場の重要性について語り、さらに4Kの高画質映像のデモンストレーションが行われた。すでに音声のハイレゾについては従来よりベルリン・フィルは積極的に取り組んでおり、当欄でも何度かご紹介しているが、映像についてもクォリティが追求されている。また、ベルリン・フィル・レコーディングとして最新タイトル「ジョン・アダムズ・エディション」が発売され、こちらの紹介も行われた。ラトル、キリル・ペトレンコ、ドゥダメル、ギルバート、アダムズ自身と5人の指揮者によるジョン・アダムズの作品集で、演奏自体はこれまでDCHでも配信されている。これが今回もCD、ブルーレイビデオ、ハイレゾ音源ダウンロード用コード、ジョン・アダムズのドキュメンタリー映像などがセットになって豪華パッケージでリリースされた。
●第2部が終わった後、プレス陣は二手に分かれることになり、この後に続くベルリン・フィル団員による学校アウトリーチ活動を取材したい人は学校行きのバスに乗り、ジョン・アダムズのドキュメンタリー映像を見たい人はその場で上映会に参加するという流れに。ワタシは映像を見せてもらうことにした。このドキュメンタリーも「ジョン・アダムズ・エディション」も十分興味深い内容なので、これはまた改めて。
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●おまけでベルリン・フィルとは関係ない宣伝を。ワタシがナビゲーターを務めるFM PORTの番組「クラシック ホワイエ」(毎週土曜22:00-23:00)、明日の回はカズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞を勝手に祝う特集ということで、カズオ・イシグロ作品のなかに登場する音楽や作曲家、あるいは小説内世界にぴったりの曲を(やや強引に)紹介するという内容で、おしゃべりしている。新潟県外の方は要ラジコプレミアムだが、会員の方はぜひお聴きいただければ。タイムフリーというサービスが始まって、放送終了後一週間はオンデマンドで聴けるようになった。便利。

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