February 5, 2018

ラ・フォル・ジュルネ2018、ナントその4

ナントの新しい会場CIC
●ナントのラ・フォル・ジュルネは今日、日曜日が最終日。今回4年ぶりに訪れたのだが、以前はなかった新しい会場 CIC OUESTホールができていた。メイン会場のシテ・デ・コングレからは道を挟んだ向かい側くらいの位置で、250席。ただ、東京と違って寒い冬の時期の開催なのと、シテ・デ・コングレで手荷物検査が導入されているため、一度外に出ると戻ってくるのが億劫だなという気持ちがわいてくる。手荷物検査自体はJリーグよりもあっさりしていて、どうってこともないんだけど。
●この日も朝イチの9時半めがけて会場に到着。マタン・ポラトがリゲティの「ムジカ・リチェルカータ」、リストの「オーベルマンの谷」他を演奏。リゲティは同じ曲の抜粋を一昨日に別のピアニストで聴いたばかりだが、切れ味の鋭さは断然若いポラト。きらびやかな響きで、さっそうと。前回ナントを訪れたときはこの人でアイヴズのコンコード・ソナタを聴いたのだった。日本のLFJにも地方を含めて何度か来てるはず。バッハだとかロマン派だとかなんでも弾いてるイメージだが、20世紀作品をもっと聴きたい感じ。
●ボリス・ベレゾフスキーはドミトリー・リス指揮ウラル・フィルとの共演で、ラフマニノフのピアノ協奏曲第4番を演奏。この曲、最近演奏頻度が増えてきているんじゃないだろうか。もっとも、今回のラ・フォル・ジュルネのテーマは「新たな世界へ」(亡命/エグザイル)なので、ラフマニノフもアメリカに渡ってからの作品に焦点を当てるということで、第4番が選ばれるのは必然。ベレゾフスキーは譜めくりを従えての演奏だが、なにを弾いても余裕を感じさせる人ではある。パワフルかつブリリアント。しかし、予定通りとはいえ、この一曲で終わってしまうとは。正味30分もないわけで、自分史上最短のコンサートだったかも。終わって客電が付いてもお客さんがなかなか立ち上がらなかったのがおかしかった。
●その後、フランス・メディア向けの記者会見直前に、ルネ・マルタンと日本プレスの懇談会が設定された。といっても、ごくごく少人数で、ざっくばらんに感想を話し合うみたいな感じ。ワタシはラ・フォル・ジュルネの多様性のあるプログラムが好きだし、特に今回はテーマの設定上、20世紀音楽や古い時代の音楽が増えて、知らない曲をたくさん聴けたのが嬉しかったというようなことを伝えた。日本で東京以外のラ・フォル・ジュルネがなくなってしまったこと、一方で世界各地でまた新たなラ・フォル・ジュルネが誕生しつつあるということも話題に。来年のテーマについても尋ねた。このあたりはまた別の機会に。
●東京でのラ・フォル・ジュルネもそうなのだが、最終日の午後、記者会見が終わると急にお祭りが終わったという気分になる。気がつくともうぐったり疲れ果てていて、店じまいモードに。この3日間でなじみのない曲や刺激的なプログラムをたくさん聴けたので、最後は安心の名曲で中和するかのように、エル・バシャのショパンとラフマニノフ。ショパンのバラード第1番、舟歌、幻想即興曲、ラフマニノフの有名な前奏曲等。ピアノ・ソロには珍しく、800席というナントでは2番目に大きな会場があてがわれていた。でも満席。終わると客席からエル・バシャへの敬意が伝わってくるような温かく力強い拍手。

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