ドミノ・ピザ
March 9, 2018

滝千春ヴァイオリン・リサイタル

●8日は紀尾井ホールで滝千春ヴァイオリン・リサイタル。ザハール・ブロンらに師事し、デビュー10周年を迎えたベルリン在住の奏者が選んだのは、なんと、オール・プロコフィエフ・プログラム。なかなかヴァイオリニストでこの選択はない。ソナタ2曲はいいとして、あとはなにを弾くのかといえばこんなプログラム。前半にバレエ音楽「シンデレラ」からの5つの小品より「ワルツ」(M. フィフテンゴリッツ編)、バレエ音楽「ロミオとジュリエット」(L. バイチ/ M. フレッツベルガー編)、ヴァイオリン・ソナタ第1番ヘ短調、後半に「ピーターと狼」(根本雄伯編/委嘱初演)、ヴァイオリン・ソナタ第2番ニ長調。ピアノは沼沢淑音。
●もりだくさんでかなり長いリサイタルになったのだが、後半がだんぜんおもしろかった。「ピーターと狼」は根本雄伯の編曲が秀逸。単に実用的な編曲ではなく、創意が伝わってくる。本来オーケストラで各楽器がさまざまなキャラクターを担当する曲だが、ヴァイオリンの多種多彩な技巧(フラジョレット、ピッツィカート、ポルタメント、重音等々)を駆使して、情景が目に浮かぶように表現する。欲を言えば、曲が曲だけになにか視覚表現、映像なのか紙芝居なのかダンスなのかパントマイムなのかがあれば最高なんだけど、それをヴァイオリン・リサイタルで言ってもしょうがないか。ヴァイオリン・ソナタ第2番はこの日の白眉で、格段の熱気を帯びて、輝かしく高揚感にあふれた瞬間を作り出していた。プロコフィエフ一流のグロテスクなユーモアもたっぷりと堪能。
●プロコフィエフの2曲のヴァイオリン・ソナタがほぼ同時期に書かれているというのは、曲想からするとかなり意外な感じがする。魅力的なのはフルート・ソナタを原曲とする第2番のほうで、乾いたリリシズムや、才気煥発な気まぐれさがあって、典型的なプロコフィエフ。共感できる曲。一方の第1番のほうは番号は先なんだけど、晩年の晦渋さを先取りしているようなところがある。これを深化ととるのか、枯れてきていると受け取るのか。
●アンコールにキュイの「万華鏡」より「オリエンタル」、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」(編曲はだれなんでしょう?)。21時半頃終演。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「ダニエル・ゼペック ― 無伴奏」です。

次の記事は「バッティストーニ指揮東京フィルのグルダ&ラフマニノフ」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ