June 13, 2018

フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル「春の祭典」

●12日は東京オペラシティでフランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル。今年最大の注目公演。前半にドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と「遊戯」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、後半にストラヴィンスキーの「春の祭典」。レ・シエクルは膨大な楽器のコレクションを持ち、作品に応じて当時の楽器を使用するというアンサンブル(だいぶ前にラ・フォル・ジュルネでも来ているのだが、大きな話題になるには早すぎた)。プログラムノートには「春の祭典」の使用管楽器&打楽器リストまで載っていて、おおむね1900年前後の楽器が並んでいて壮観だが、実際にそれらの楽器がステージ上で演奏されるというんだから。「春の祭典」は1913年初演時の楽譜を復元したもので、100年前のパリへと仮想タイムスリップできる得難い機会。
●どの曲にも共通するのは、なんども聴いたことがある曲であっても、まるで初めてその曲に触れたような感銘があったということ。響きの色合いが違う。モダン・オーケストラがブリリアントでツルツルに磨かれた響きだとすると、こちらはもっとざらりとして、くすんだ質感、だけどパレットの色数は多くて、変化に富んでいる。たとえるなら具の種類がやたらと多いサンドイッチみたいな(なんだそりゃ)。
●で、楽器はさておいても、演奏そのものが生命力にあふれているのが、すばらしい。ヴィルトゥオジティではなく、アンサンブルとしての巧みさ。ときにロトはオーケストラをエネルギッシュに鼓舞する。でも妙なタメとかはなくて、粘らず、どんどん進む。清潔感すら感じる。
●前半、「ラ・ヴァルス」が終わったところで、すでに客席は大喝采、ブラボー多数、スタンディングオベーションも。もうこれで終演したかのような盛りあがり。前半「牧神の午後への前奏曲」でフルートのソロ、後半「春の祭典」でファゴットのソロで始まるという対称性も吉。「春の祭典」の後、ふたたびわきあがる客席に向かって、ロトはメモを丸読みして日本語で挨拶、アンコールにビゼーの「アルルの女」第1組曲よりアダージェット。清冽。最後はロトのソロ・カーテンコール。
●それにしても「春の祭典」って、(当たり前すぎるけど)1913年以降の音楽がなにひとつ存在しない段階で生み出されたわけで、ストラヴィンスキーは天才。別の惑星からやって来たのか、モノリスにでも触れたのか。

このブログ記事について

ひとつ前の記事は「小山実稚恵ピアノシリーズ「ベートーヴェン、そして……」制作発表」です。

次の記事は「いよいよワールドカップ2018ロシア大会開幕へ」です。

最新のコンテンツはインデックスページへ。過去に書かれた記事はアーカイブのページへ。

ショップ