July 17, 2018

決勝戦 フランスvsクロアチア オウンゴール+VAR+疑惑のPK+乱入者+GK大チョンボ+土砂降りのドタバタ劇 ワールドカップ2018

フランス●4年に1度のお祭りの最後は「なんでもあり」のドタバタ劇で締めくくられた。今大会を象徴するあれこれがあったという意味では決勝戦にふさわしかったのかも。フランスとクロアチア、ただでさえ決勝戦までの日程が一日クロアチアが不利なのに、彼らは3戦連続で延長戦を戦っている。コンディションの差が否めない。おまけに、どちらに転んでもおかしくないようなほんのわずかな運が試合の行方を大きく左右してしまった。とはいえ、フランスの優勝は実力にふさわしいもの。2回目の優勝。ワールドカップで「自国開催以外で優勝した国」が新たにひとつ誕生した。フランスの優勝はリアリズム、クロアチアの側にあったのはロマンティシズムだったと思う。
●前半、クロアチアがゲームを支配。攻めるクロアチアと守るフランスという構図は両者にとってゲームプラン通りだろうが、前半18分、フランスはフリーキックでグリーズマンがクロスをゴール前に入れると、クロアチアのマンジュキッチが痛恨のオウンゴール。これは不運というしかないのだが、その前のフランスがフリーキックを得た場面でそもそもファウルがあったのかどうかが試合後に物議を醸した。前半28分、クロアチアはフリーキックからモドリッチがファーサイドに走り込んだブルサリコにロングパスを送り、その折り返しのボールの混戦からペリシッチが蹴り込むビューティフル・ゴールで同点。前半34分、この試合で最大の問題の場面が。フランスのコーナーキックでマテュイディが競ったボールがペリシッチの腕に当たった。当初、主審は問題なしと見たようだが、VARのアドバイスでビデオを確認して、PKを宣言。グリーズマンがPKを決めて2対1。実質的に3点ともクロアチアが入れたようなもので、フランスがなにも攻撃しないうちに2対1までスコアが進んでしまった! この場面、手に当たっていることは明らかなのだが、すぐ目の前で高速で飛ぶボールの軌道が変わったため、クロアチア側から見れば腕をどけることなど不可能な話。しかしフランス側から見れば、腕に当たるような姿勢で競り合っている時点でミスということになるのだろうか……。いずれにしても、こんなほとんど避けようもないハンドで試合が決定づけられることが、サッカーの競技性に貢献することは決してない。
●フランスはリアクションサッカーに徹する。後半10分でカンテをエンゾンジに交代したというのが意外だったが、後半14分、ポグバがミドルシュートを弾かれたところに再度狙い澄ましたシュートを打って3点目。もうこれで試合は決まったようなもの。後半20分にはエムバペの鋭いシュートで4点目。クロアチアはがっくりと膝をつくはずだったが、その直後、後半24分にフランスのキーパー、ロリスが大チョンボ。つめてくるマンジュキッチに対してなにを思ったのか足技で交わそうとしたら、そのままマンジュキッチにかっさわれて失点。ワールドカップ優勝国のキーパーですら、ありえないミスをするということか。3点差が2点差になったことで、最後の最後までクロアチアは走り切った。もちろん、ここからなにかが起きるはずもないのだが……。
●4対2という決勝らしからぬスコアでフランスが優勝。しかし派手なゲームではなく、やや後味の悪いゲームだった。結局、ビデオ判定をしてもやっぱり誤審問題がクローズアップされるということを決勝戦で明らかにしてしまったという皮肉。でも一度使えば、ビデオ判定はもう止められない。これがあれば少なくとも2002年のような事件は起きないはず。使い方が難しいのと、そもそもサッカーのルールは客観的事実ではなく経験則で運用されるところが多すぎるがために齟齬が生じているような気がする。おまけにこの試合ではクロアチアの反撃ムードが高まりかけたところで、ピッチ上に複数の乱入者が現われる始末。なんでも反プーチンのバンド「プッシー・ライオット」とかいう人々なんだそうだが、完全に場違い。サッカー・ファンの逆鱗に触れて、いったいなにを共感してもらえると思っているのだろうか。ちなみに、ボール支配率は63%でクロアチアが大きく上回っていた。シュート数も敵陣ペナルティエリアでのプレーもコーナーキックでもクロアチアは勝っていたのだが、現代サッカーではそれはなんの優位も示していない。
●表彰式は土砂降りになった。プーチンもいる。全員がずぶ濡れになっている姿が妙にドラマティックだ。大会MVPはクロアチアのモドリッチ。ニコリともせずにトロフィーを掲げた。彼はスター性ではなく献身性でこの賞を獲得した。フランスのデシャン監督は、キャプテンとして現役時代に優勝し、監督としてまた優勝を果たしたことになる。フランスの選手たちがデシャンを胴上げをする。「ワッショイ!」の声が聞こえてきそうだ(言ってないと思うけど)。98年、開催国フランスが初優勝した際には、新時代のヒーロー、ジダンへの熱狂とともに彼らの勝利を心から祝福できたのだが、今回の決勝ではむしろモドリッチがヒーローになってほしかったという思いが残る。リアルか、ロマンか。決勝戦での勝者と敗者のコントラストはいつだって胸を打つ。

フランス 4-2 クロアチア
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★★★

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