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August 16, 2018

沼地へ。残留争いに本格参入したポステコグルーのマリノス

進入禁止●だーーーっ! マリノス、負けた。しかも残留争いの天王山ともいえる(試合開始時点で)最下位の名古屋に1-2。いよいよお尻に火が付いた。今節を終えて、14位マリノスから最下位ガンバ大阪まで、わずか勝点2の差! この狭いゾーンにマリノス、鳥栖、名古屋、長崎、大阪の5チームがひしめき合うという壮絶な残留争いになっている。念のため、確認しておくと2チームがJ2自動降格し、1チームが入れ替え戦に回る。
●DAZNで見たが、試合終了後、マリノスのポステコグルー監督はこれまでとまったく変わらない強気のコメントを残していた。負けたけど、試合内容は勝点1、あるいは3に値した、みたいなことを。ちがーーーう! それ、違うから。ここまで、エキサイティングすぎる革命的戦術を掲げる尊師ポステコグルーへの帰依を貫いてきたワタシだが、はっきりとそれは違うと否定したい。あのさ、これまでどんなに負けても信仰が揺らがなかったのは、戦術が斬新だったからなんすよ。でも、この名古屋戦、ぜんぜんエキサイティングじゃなかった。それはトラッキングデータにも表れている。キーパーの飯倉の走行距離は4.8キロしかない。一時期、7キロ以上も走ってメッシより走るゴールキーパーと言われ、あたかもディフェンスラインの一員のように異常に高いポジションをとっていた飯倉だが、これじゃ相手キーパーより走っていない。ポジションもぜんぜん高くない。
●この日、ポステコグルーは3バックを採用した。センターバックが3人いるんだから、キーパーがディフェンスラインの中に入る余地はない。ポジショニングは常識的だ。従来、センターバックを務めていたミロシュ・デゲネクはレッドスター・ベオグラードに移籍してしまったため、フランスのランスからドゥシャンを獲得したのだが、もうひとつ中澤とのコンビがフィットせず、この日はドゥシャン、中澤、栗原の3枚のセンターバックで守ろうとした。相手の名古屋もボールを主体的に持って攻撃を仕掛けるタイプのチームだったこともあって、結果的にマリノス側にまったく戦術的な異端性が感じられなくなっている。キーパーをフィールドプレーヤーのように扱って数的優位を作るという発想を失ってしまうと、これって単に攻撃が遅いだけのチームなのでは? 現代フットボールで最強の武器であるカウンターアタックを捨てる一方、自陣深くではキーパーとセンターバックがパスミスを連発して相手にショートカウンターのチャンスを次々と与えるという自虐戦術。2失点で済んだのはどう見てもラッキー。
●スペクタクルがあったからこそ、負けても次も見たいと思えた。でも、スペクタクルがないならただの弱いチームだ。チャンスの放棄と引き換えに、バックパスと横パスを増やしてボール・ポゼッションを高めてなんの意味があるのか。幻想を与えてくれない革命家に居場所はない。

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