September 3, 2018

セイジ・オザワ 松本フェスティバル 秋山和慶指揮サイトウ・キネン・オーケストラ&小澤征爾音楽塾オーケストラ「ジャンニ・スキッキ」

セイジ・オザワ 松本フェスティバル2018
●31日はスーパーあずさに乗って松本へ。コンサートは秋山和慶指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(キッセイ文化ホール)。フランス音楽プログラムで、イベールの祝典序曲、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、ラヴェルのボレロ、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。オルガン付きといってもパイプオルガンはこのホールにないのだが、それでもどうしてもこの曲を、という選曲なんだろう。前半おしまいのボレロですでに客席は大喝采。より凝縮度の高いサウンド(とりわけ弦楽器)を聴けたのは後半のサン=サーンス。客席はいっそうの熱気に包まれて、カーテンコールを繰り返した後、舞台から楽員が退いても拍手が止まず、指揮者も楽員もみんなと一緒に姿をあらわす。これを2回繰り返して、最後に去り際のマエストロに盛大なブラボー。この盛り上がりに感じるのは、スーパースターがもたらす祝祭性よりも、わが街の誇れるチームを応援したいという松本山雅的ななにか。そういう意味で、今ここに求められるのはイニエスタやフェルナンド・トーレスではなく、反町康治なのかなとも思う。
松本駅 2018
●翌日は小澤征爾音楽塾オーケストラによるOMFオペラ、プッチーニ「ジャンニ・スキッキ」(まつもと市民芸術館)。通常ならダブルビルになる演目だが、「ジャンニ・スキッキ」一本のみということで、休憩なしで1時間のみの短いプログラム。喜劇的作品だし、題材もわかりやすいので、オペラ入門編としてもぴったり。デイヴィッド・ニース演出で、デリック・イノウエ指揮小澤征爾音楽塾オーケストラ。ジャンニ・スキッキにロベルト・ディ・カンディア、ラウレッタにアナ・クリスティ、リヌッチオにフランチェスコ・デムーロ他。舞台も衣裳も明るくて洗練されていて、とてもシャレている。オーケストラのサウンドもみずみずしく、毒気のないコメディを堪能。プッチーニはこれを「三部作」の一作として書いたので、企画趣旨からしてしょうがないのだが、もしこれが独立した3幕もののオペラだったらと思わずにはいられない。この題材はプッチーニにとっての「ファルスタッフ」になれたかもしれないのに。3幕ものだったら、ジャンニ・スキッキの邪悪さの根源と、ラウレッタとリヌッチョ側にある若者の純粋な愛情の裏に隠された打算や欲望、みたいなところが描かれていたにちがいない。
●ところで、この「ジャンニ・スキッキ」の開演前に、とても気の利いた楽器紹介があった。オーケストラのパートごとに順々に登場して、その楽器に応じた曲を演奏し、ナレーションが入る。たとえばファゴットだったら「笑点」のテーマを演奏しながら入って来て笑いをとったり、チューバだったらダースベイダーの「帝国のマーチ」だったりとか、抜群に楽しい。最後はヴァイオリンが「カルメン」前奏曲を演奏して、途中からオーケストラ全員が参加して華やかに終わる。ピットに全員がそろったところで、「では、今からピットを下げまーす」とナレーションが入って、ガーッとピットが沈んでいく(このときプレーヤーたちが客席に向かって手を振ってくれるのがうれしい。一気に客席が温かい気分になる)。オペラの上演なのに、オーケストラの楽器紹介をこんなにスマートにできるとは。この場面だけでも松本まで来たかいがあったというもの。

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