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January 29, 2019

イランvsニッポン@アジア・カップ2019UAE大会準決勝

イラン●サッカーの醍醐味がぎゅっと詰まったような見ごたえのある試合だった。ほかの試合とはぜんぜんクォリティが違う。前半が終わった時点で、すでに「やっぱりサッカーってすばらしいな、勝っても負けてもこの試合を見ることができてよかったな」って思えたほど。
●イランを率いるのは智将ケイロス監督。アジアでは珍しい8年間の長期政権。それだけ成功しているという証拠でもあって、ワールドカップ2018ではモロッコに勝ち、ポルトガルに引分け、スペインに惜敗している。世界基準での戦いという点でニッポンとよく似た立ち位置にあるという認識。エースはロシアのルビン・カザンでプレイするアズムン。パワーも高さもスピードも決定力も突破力もある万能型ストライカー。18番のジャハンバフシュは現在ブライトンでプレイするが、オランダのAZでリーグ得点王に輝いたことも。アジアの選手が欧州の主要リーグで得点王を獲れるとは。会場にはイラン・サポが多く、ニッポンにとってはアウェイ状態。
●で、ニッポン。森保監督はレギュラーメンバーをそろって先発させた。フレッシュでパワーのある武藤を大迫と同時起用する手も考えられるところだが、森保監督の流儀としてそれはない。いったん選手を信頼すると決めたら、少々のことがあっても使い続ける。GK:権田-DF:酒井宏樹(→室屋)、吉田、冨安、長友-MF:遠藤航(→塩谷)、柴崎-堂安(→伊東純也)、南野、原口-FW:大迫。序盤、ニッポンはボールを保持するのではなく、早く前に運ぼうという攻撃的な姿勢で臨んだ。イランの強いプレッシャーを受けながらも、これを跳ね返すニッポンの選手たち。開幕時から見ればコンディションがあがっているようで、やはり決勝までを見据えた調整をしてきたのだろう。イランはフィジカルが強靭で、すべてのプレイにダイナミズムが感じられる。ゴールの近くで逐一ロングスローを放り込んでくるのが厄介。フリーキックも常にゴール前で高いボールを競り合うことになる。冨安も吉田も中央はよく跳ね返していたのだが、進むにつれてイラン・ペースに。右サイド、堂安はオフ・ザ・ボールの動きで物足りなさを感じる。左サイドの原口は守備に追われる展開。前半は0対0で五分五分の情勢。権田のパスミスから大ピンチを招いたが、自分のファインセーブで事なきを得た。今大会の権田は不安定だが好セーブも多い。
●試合が大きく動いたのは後半11分。南野がゴールに向かってドリブル突破をしかけるが、相手ディフェンスのチャージで倒れる。イランの選手たちは主審に向かって「ファウルじゃないだろう!」とアピールするが、笛は吹かれていないし、ボールはラインを割っていない。南野はすぐに立ち上がって、ゴールラインを割る前にボールに追いついた。あわててイランの選手たちがゴール前に戻るのだが、ここで南野がピンポイントのクロスを入れて、中央で大迫が頭ですらして先制ゴール。このシーン、南野の判断力にも感心するが、それ以上にノープレッシャーならあれだけ精度の高いクロスを蹴ることができることに驚嘆。
●その後、遠藤が負傷で塩谷と交代。UAEでプレイする塩谷にとって、ここはホームグラウンド。追加招集の塩谷は控え選手ながら今大会に欠かせないキープレーヤーになっている。逆に言えばこのポジションにケガ人が絶えないわけで、ついに遠藤まで欠いてしまうとは。
●後半18分、ペナルティエリア内で南野がパスを出すと、スライディングしてブロックに入ったイランの選手の手にボールが当たり、笛が鳴ってPK。その後、主審はVARで確認して、なおもPKという判定。ワタシの感覚ではこれはPKではない。ここがワールドカップでも納得できなかったところで、スライディングした選手が体を支えている手に当たっているわけで、ここにボールが飛んで来たら100%だれも避けられない。これでPKをもらえるなら、ゴールを狙うより、相手ディフェンスの手を狙って蹴ったほうが得策になりかねない。ハンドの反則の運用って、これでいいんだろうか。
●2点目が入ってからはイランの集中力が格段に落ちてしまった。イライラを抑えきれないアズムンが暴力行為を連発。レッドカードがふさわしかったはず。それとドロップボールで常識的にはイランの選手がニッポンにボールを返すべきところで、味方にパスを出して攻撃を仕掛けたのには驚いた。ゴールにならなかったからよかったようなものの、これはどうなんだろう(ルール上は問題ないのだろうが)。イランは足が止まりだし、いつニッポンが追加点を奪ってもおかしくない展開だったが、後半47分にようやく原口がドリブルで相手を振り切って、キーパーとの一対一から落ち着いてゴールを決めた。終わってみれば3対0の完勝。冨安をはじめ、ディフェンス陣がよく耐えた。メンタルの強さで相手を上回ったという試合で、アジア・カップではなんども通ってきた道でもある。
●決勝の相手はカタールまたはUEA。ニッポンはアジア・カップでこれまで4回決勝戦に進んで、4回とも勝っている。この勝負強さは際立っている。

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