March 5, 2019

エンリコ・オノフリ/イマジナリウム・アンサンブル

●3日は神楽坂の音楽の友ホールで、「エンリコ・オノフリ~輝くヴァイオリン、イタリアバロックの栄光」。バロック・ヴァイオリンのエンリコ・オノフリと杉田せつ子、チェンバロのロゼッラ・ポリカルドによる初期イタリア・バロック中心のプログラム。前半にサラモーネ・ロッシ、カステッロ、メールラ、フォンターナ、ヴィルジリアーノ、ファルコニエリ、後半にウッチェリーニ、ホセ・デ・カストロ、コレッリの作品。おおむね前半が17世紀前半、後半が17世紀半ばから末にかけての作品で、約100年にわたるイタリア・バロックの旅といった趣き。プログラム全体が流れを持っていて、ひとつの大きな作品のように聴いた。冒頭にロッシの「新しいソナタ」第1番、続いてカステッロの「新しい様式によるソナタ集」第2巻より第4番といったように、「新しい」作品で始めて時代を切り取る。この「新しさ」を実感するためには「旧さ」を知らなければわからないという、はるかなる17世紀……。
●オノフリの鮮烈なヴァイオリンに杉田せつ子さんがぴたりと寄り添って、2台のヴァイオリンによる対話と歌、踊りの音楽がくりひろげられる。そこに交じる描写の音楽がユーモアを添える。ファルコニエリの「サタンの義息バラバスの戦い」では甲冑の戦士たちが剣を振り回して戦うのだが、戦いではあっても牧歌的なおかしみを感じずにはいられない。ウッチェリーニのアリア第9番「ヘルマプロディートス(両性具有)、雌鶏とカッコウによる麗しき奏楽」では、ニワトリ(コッ、コッ、コッ……)とカッコウの鳴き声が共演する。17世紀の田園交響楽。ホセ・デ・カストロのソナタ第1番に至って、ようやく序曲、アルマンド、コレンテ、メヌエットというなじみのある序曲+舞曲群の組曲スタイルが登場。そしてこの流れで聴くと、最後のコレッリは創造の火花を散らして爆発的な進化を遂げたといった感がある。アンコールにウッチェリーニの「ラ・ベルガマスカ」によるアリア。爽快な幕切れ。
●この後、オノフリは3月9日に金沢でオーケストラ・アンサンブル金沢を指揮する。こちらはウィーン古典派プログラム。地元の方はぜひ。
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●宣伝をひとつ。ONTOMOの連載「耳たぶで冷やせ」の第11回は「スピード狂の時代」。乗り物にまつわる名曲コラム。読んで、聴くが吉。

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