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March 6, 2019

今井信子・夢 第6回 ハンガリアン・スケッチ

●5日は浜離宮朝日ホールで「今井信子・夢」第6回「ハンガリアン・スケッチ」。ヴィオラの今井信子が近年バルトークについてリサーチするなかで、ハンガリーの民俗音楽に造詣の深いヴァイオリニスト、ミハーイ・シポシュと出会って実現したというプログラム。バルトークの44の二重奏曲から、ジメシュ地方の農民音楽、バルトークのヴァイオリン・ソナタ第2番(ヴィオラ版)、ルーマニア民俗舞曲、コダーイのアダージョ(ヴィオラ版)、最後にブラームスのヴィオラ・ソナタ第1番という構成。ピアノはマールタ・グヤーシュ。
●で、名前だけを見ても気づいていなかったんだけど、ヴァイオリンのミハーイ・シポシュってムジカーシュの人じゃないの! 特徴的な白髪白髭の風貌で思い出した。以前、ラ・フォル・ジュルネで来日して大盛り上がりだったハンガリーの民俗音楽アンサンブル。なるほど、バルトークの民謡由来の作品を弾くのにこの人以上の共演者もいない。「ジメシュ地方の農民音楽」なんて、バルトークとどう違うのかわからない。「ルーマニア民俗舞曲」では、各曲でまずシポシュが自在のソロを弾いてから、その後、今井信子とグヤーシュでバルトークを弾くという趣向になっていたんだけど、あそこでシポシュが弾いていたのは元ネタの民謡ということなのか、それともバルトークを民謡風に還元したものなんだろうか。ともあれ、シポシュのヴァイオリンから漂う土の香りと来たらもう。
●コダーイのアダージョ(ヴァイオリン用の原曲を作曲者が編曲)は、ヴィオラの深みのある音色が生かされた佳品。こうして並べると、メインプログラムであるブラームスでは、晩年の作曲者の心情をうかがわせるような玄妙な味わいが際立っていて、ハンガリーとの親近性みたいなものは感じない。と思っていたら、アンコールにヴィオラでハンガリー舞曲第5番できれいに着地。
●でも本当のハイライトは、最初に登場した桐朋学園大学付属子供のための音楽教室の子供たちだったかも。今井信子と子供たちのハンガリー音楽をめぐるワークショップの成果として、大勢の子供たちが舞台に登場して、バルトークの44の二重奏曲から第32番、ハンガリー民謡「ドナウからの風」、中山晋平「黄金虫」を演奏。年齢はまちまちだけど、多くは小学校1、2年生くらいだろうか。みんなのびのびと弾いている様子で、なんだかグッときてしまった。