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March 14, 2019

ダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ

●13日はすみだトリフォニーホールでダニエル・ハーディング指揮マーラー・チェンバー・オーケストラ。すみだ平和祈念音楽祭2019と銘打たれた公演で、プログラムはエルガーの変奏曲「エニグマ」より「ニムロッド」、シューベルトの交響曲第3番、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」。チェンバー・オーケストラでありながら、ブルックナーがメイン・プログラム。ハーディングは新日本フィル時代にたくさん登場したすみだトリフォニーホールに久々に帰還した。311当日にこの場所にいたハーディングだけあって、最初の「ニムロッド」は鎮魂の音楽。演奏が終わっても客席は沈黙し、ハーディングも微動だにせず、うんと長い静寂が続いた。その後、拍手があって、一転して小気味よく軽快なシューベルトへ。
●後半のブルックナー、弦楽器は12型、コントラバス5。ハーディングのブルックナーは新日本フィル時代にも聴いたが、同じ設計思想をより徹底した実践で聴いたという印象。外枠で音の大伽藍や宗教的恍惚感を作り出すのではなく、内側から緻密にデザインされ、ディテールの積み上げから全体像を再構築するような音楽。うっそうとした深い森というよりは、庭師の手入れがよく行き届いた名庭というか。シューベルトと地続きの音楽であることも感じさせる。編成の小ささにまったく不足感を覚えないのは、奏者のクォリティの高さあってこそか。前回、パリ管弦楽団との来日で足を骨折したハーディングだが、足を気にしつつも、すでに杖は使っていない。早めにカーテンコールが切り上げられ、客席は明るくなったが拍手が鳴りやまず、最後はソロ・カーテンコール……ではなく、ハーディングと首席ホルン奏者のふたりが一緒に登場してのカーテンコール。珍しいシーンだけど、ホルンの大活躍を思えば納得するしか。