March 22, 2019

グスターボ・ドゥダメル指揮LAフィルのジョン・アダムズ&マーラー

●20日はサントリーホールでグスターボ・ドゥダメル指揮LAフィル。LAフィル100周年アジア・ツアーとして、ソウルに続いての東京公演。前半はユジャ・ワンのソロを迎えてジョン・アダムズの Must the Devil Have All the Good Tunes? (日本初演。今後のためにも日本語表記がほしかった)、後半がマーラーの交響曲第1番「巨人」。ジョン・アダムズの新作はこの超豪華メンバーで今月世界初演したばかりのピアノ協奏曲。LAフィル委嘱作品。30分弱の切れ目のない単一楽章の作品だが、協奏曲の伝統に従って急緩急の三部構成になっている。ピアノはほとんど弾きっぱなし。冒頭は独奏ピアノと各弦楽器のソロのみによるアンサンブルで始まって、楽譜上の指示は「Gritty、funky」。ファンキーなアメリカン「死の舞踏」みたいなコンセプトがあるようで、ジョン・アダムズの練達のオーケストレーションは輝かしいんだけど、ソリストの活躍が求められる協奏曲という形態が足枷になっているような気もしなくはない。本当はホンキートンク・ピアノとかがもっと目立つような猥雑な雰囲気の曲なのかなと想像。カーテンコールで客席からジョン・アダムズが登場。
●後半のマーラー「巨人」はLAフィルの性能の高さが生かされた華麗な演奏。アクセルを軽く踏んだだけで猛スピードで爆走するスポーツカーのようなオーケストラ。音色は非常にブリリアントで、強奏時の抜けるような爽快な響きはさすが。管楽器はもちろん、弦もパワフルで余裕を感じさせる。このスーパーオーケストラにドゥダメルがパッションを注ぎ込み、ときには大胆なテンポの操作で粘り気のある濃厚なドラマを演出する。第2楽章冒頭の弦の切れ込みの鋭さは強烈。第3楽章のコントラバスはソロで。最近の一流オーケストラはどこもそうだけど、コントラバスであっても流麗なソロで、朗々と歌い上げ、決して朴訥さなど感じさせない。終楽章は壮麗。ドゥダメルの芸風が前面に出たマーラーだった。アメリカのオーケストラだと客層もそちら側に寄るということなのか、サントリーホールでは珍しくカーテンコールの早いうちからスタンディングオベーションが目立ち、一方でこれだけ沸いたにもかかわらず拍手はすんなり止んでソロ・カーテンコールはなし。

このブログ記事について

ショップ