July 26, 2019

佐渡裕&兵庫県立芸術文化センターのバーンスタイン「オン・ザ・タウン」

オン・ザ・タウン●25日は東京文化会館で兵庫県立芸術文化センターによる佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2019、ミュージカル「オン・ザ・タウン」。1944年、レナード・バーンスタイン26歳の年の作品。これを兵庫県立芸術文化センターでは8公演(!)、続いて東京で4公演を行なう。相変わらず驚異的な集客力で脱帽するしか。演出はアントニー・マクドナルド。このシリーズではブリテン「夏の夜の夢」も演出した人。キャストはロンドンでオーディションを行ない、1000通以上の応募があったとか。ミュージカルに関してはワタシは門外漢なんだけど、歌もダンスもみんなハイレベルで鮮やか。次々と登場するダンスシーンの楽しさは、オペラにはない開放感をもたらしてくれる。スマートかつレトロで、シャレた舞台。ピットに入るのはもちろんPACオケこと兵庫県立芸術文化センター管弦楽団。ゲスト・コンサートマスターにベルリン・ドイツ交響楽団のコンサートマスター、ベルンハルト・ハルトークを招くなど、要所に強力ゲストを迎えつつ、若いプレーヤーたちが一体となってキレのあるサウンドを披露してくれた。
●「オン・ザ・タウン」の舞台はニューヨーク。3人の水兵が24時間かぎりの休暇をもらって、上陸するところから話が始まる。24時間でニューヨークをぜんぶ見てやろう、女の子とデートしよう! ウキウキとした期待感から、3人のハチャメチャな恋の騒動が描かれる。「オン・ザ・タウン」は純然たるミュージカルだけど、一日の出来事をコミカルに描くという点で、オペラ・ブッファの伝統にのっとっている。後の「ウェスト・サイド・ストーリー」や「キャンディード」に比べれば軽めの作品とはいえ、明るく楽しい音楽の合間にもピリッと来るような風刺や辛辣なギャグなどもあって、なんともおかしい。特にいいなと思ったのは、クレアの婚約者であるピトキン判事の「なんでもわかってるよ」病の描き方。いやー、なかなか痛いところを突いている。クレアのインテリをこじらせて病的に本能的という人物造形にも爆笑。でも、本質的にはこれは若者のための作品なんすよね。もっとも胸を打つのはゲイビーのアリア(って言わないのか)。ずっと自分が自分じゃないだれかだったらいいのにと思って生きてきたけど、(アイヴィと出会えて)今こそ自分が自分でよかったと思える、っていう歌。泣ける。
●「オン・ザ・タウン」は幕切れが秀逸。3人の水兵たちが帰艦する場面で、入れ違いで別の三人組が休暇を得て飛び出してくるところで、ハッとさせられる。終わりが始まりにつながっている。彼らは兵士なんすよね。恋の騒動は一日限りで、彼らにとっての日常は軍務。うっすらと戦争の影が感じられて、これって同じバーンスタインの交響曲第2番「不安の時代」とよく似たトーンがあるなと思った。戦時における個人の孤独をそれぞれ反対の側から描いている。

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