August 9, 2019

ダン・エッティンガー指揮東京フィル ~ 第2回 渋谷の午後のコンサート「歌うヴァイオリン」

渋谷 夏の日の午後
●9日はBunkamura オーチャードホールでダン・エッティンガー指揮東京フィル。14時開演の「渋谷の午後のコンサート」第2回で、タイトルは「歌うヴァイオリン」。客席は盛況。今、平日昼の公演はとてもホットなのだ。エッティンガーとヴァイオリンの大谷康子さんが、トークをさしはさみつつ、曲を演奏する。あらかじめ寄せられた質問に答えるコーナーなどもあって、飽きさせないようによく練られた構成だった。久々のエッティンガー&東フィル。
●プログラムは、前半がロッシーニの「ウィリアム・テル」序曲、モンティのチャールダーシュ、バッハの「G線上のアリア」、ベートーヴェンのロマンス第2番、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。大谷康子さんのソロが大活躍。後半は一転してシリアスなムードになって、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」。演奏の精度もぐっと高まって、起伏に富んだドラマティックなチャイコフスキーに。エッティンガーは第1楽章のクラリネットとか、第3楽章のフルートやトランペットなど、ところどころで管楽器を強調して意表をつく。ややアクの強い音楽なのだが、これぞ「悲愴」という気も。第3楽章の爆発的な歓喜から、悲痛な第4楽章へと進む感情表現の落差はやはり鳥肌もの。最後の消え入るような弱音も念入りで、場内には完全な静寂が訪れた。
●こんなふうに、前半はリラックスして聴ける小品集、後半はシリアスな曲という組合せは悪くない。甘いものを食べたら、辛いものも食べたくなる。ピーナッツあっての柿の種。楽しいだけじゃなくて、すごいものを聴いたという満足感があって、客席の雰囲気がいい。後半に「悲愴」が置かれたのは、ミューザ川崎のフェスタサマーミューザと曲目を共通させるという背景もあるんだろうけど、結果的にとてもよかったのでは。
●この公演のプログラムノートを書かせてもらったのだが、通常の公演に比べて、客席でプログラムノートを読んでいる人の割合がずっと高いことに気づいた。すごいプレッシャーがかかる場面(集団で原稿を校正されている気分になる。修行)。
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●お知らせを。ONTOMOの拙連載「耳たぶで冷やせ」、第15回は「『マンフレッド』ってだれ? チャイコフスキーの交響曲とシューマンの序曲に登場するあの人」。渋いネタだが、岩波文庫の「マンフレッド」(バイロン著/小川和夫訳)が復刊された記念に。

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